葬儀関連の情報を集めていると「区民葬・市民葬儀とは?」と首をかしげる方もいますよね。

区民葬・市民葬儀とは、各自治体が住民に提供するサービスの1つであり、安価な葬儀プランになります。なるべく葬儀費用をおさえたい方は、区民葬・市民葬儀を検討してみましょう。

ここでは、区民葬・市民葬儀の特徴とメリット・デメリット、費用、申込方法、注意点などを解説します。

区民葬・市民葬儀とは?特徴をわかりやすく解説

区民葬・市民葬儀とは、各自治体が住民に提供するサービスの一環であり、安価な葬儀プランになります。

区民葬・市民葬儀は自治体によって呼び方が異なり、「市民葬儀、区民葬儀、町民葬儀、規格葬儀」などといわれることもあります。

「区民葬(区民葬儀)」は区が提供する葬儀プラン、「市民葬(市民葬儀)」は市が提供する葬儀プランになります。

ここでは、区民葬・市民葬儀の主な特徴を解説します。

【区民葬・市民葬儀とは?】区民葬のはじまりと歴史

区民葬は、戦後の困窮した時期に、東京の葬祭業協同組合が東京都と協力して発足した制度「都民葬儀」がはじまりとなっています。

そして、現在は東京だけでなく、千葉県や埼玉県、神奈川県などの一部でも区民葬・市民葬儀の制度が導入されています。

ですが、全国的には、区民葬・市民葬儀の制度を導入していない自治体も多く、誰でも利用できるサービスではありません。

区民葬・市民葬儀を検討するときは、まず、お住いの自治体が区民葬・市民葬儀の制度を導入しているかを確認しましょう。区民葬・市民葬儀の有無や内容は、各自治体のホームページから確認できます。

【区民葬・市民葬儀とは?】特徴と葬儀内容を要チェック

区民葬・市民葬儀では、葬儀における一部の物品・サービスについて、自治体と提携葬儀社の契約による「協定料金」で利用することができます。

そのため、区民葬・市民葬儀にすると、一般的な葬儀よりも安い価格で、通夜・葬式などの葬儀をおこなうことができます。

区民葬・市民葬儀の内容は自治体によって異なりますが、基本的に、葬儀における必要最低限のものが区民葬・市民葬儀に含まれています。

たとえば、区民葬・市民葬儀に含まれるものは、以下のとおりです。

●祭壇
●霊柩車
●火葬料金
●遺骨収納容器・・・など

一方、区民葬・市民葬儀に含まれないものは、以下のとおりです。

●ドライアイス
●遺影写真
●御供物
●返礼品
●生花
●会葬礼状
●飲食費
●ハイヤー
●マイクロバス
●テント
●斎場使用料・・・など

区民葬・市民葬儀に含まれないものを追加する場合は、別途オプション料金が発生します。

このように、区民葬・市民葬儀では、必要最低限の基本プランだと葬儀費用が安く、基本プランに追加・変更すると葬儀費用が高くなる可能性があります。

区民葬・市民葬儀は、葬儀内容によって、安くも高くもなることを覚えておきましょう。

区民葬・市民葬儀における葬儀の流れは、一般的な葬儀と変わりません。「ご逝去、お迎え・搬送、安置、打合せ・段取り、納棺、通夜、葬儀・告別式、出棺、火葬、初七日法要」という流れになります。

区民葬・市民葬儀とは?メリット・デメリット、おすすめの人

区民葬・市民葬儀には、メリットだけでなく、デメリットもあります。

葬儀の内容や規模によっては、区民葬・市民葬儀にすると、一般の葬儀よりも割高になる可能性がありますので、区民葬・市民葬儀のメリットとデメリットを事前に確認しておきましょう。

ここでは、区民葬・市民葬儀のメリット・デメリット、おすすめの人・おすすめできない人を解説します。

【区民葬・市民葬儀とは?】区民葬・市民葬儀のメリット!

区民葬・市民葬儀には、以下のようなメリットがあります。

●割安料金で葬儀ができる
●葬儀費用を安くおさえられる
●自治体と契約している葬儀社に依頼できる
●自治体の指定葬儀社が対応するので安心

割安料金で葬儀がおこなえることは、区民葬・市民葬儀の大きなメリットといえます。

一般的な葬儀費用の相場は「100~200万円ほど」になりますので、急な葬儀となった場合、必要なお金を準備できないことがあります。ですが、区民葬・市民葬儀にすれば「50万円ほど」の費用で葬儀ができます。

このほかにも、区民葬・市民葬儀には、自治体が指定する葬儀社に依頼できるというメリットがあります。

区民葬・市民葬儀では、自治体からの条件をクリアした、実績と信頼のある提携葬儀社が対応します。

葬儀について不明な点や困ったことがあっても、自治体の提携葬儀社に質問・相談できれば安心ですよね。自治体に認められた提携葬儀社であれば、葬儀プランの追加・変更などで法外な料金を請求される心配も減ります。

【区民葬・市民葬儀とは?】区民葬・市民葬儀のデメリット・・・

区民葬・市民葬儀には、以下のようなデメリットがあります。

●必要最低限の質素な葬儀になる
●割安料金は一部の物品・サービスのみ
●葬儀プランを追加・変更すると割高になることも
●自由に葬儀社を選ぶことができない
●斎場を指定している自治体もある
●料理や返礼品などが禁止の自治体もある

区民葬・市民葬儀には、葬儀における一部の物品・サービスだけが含まれています。

そのため、区民葬・市民葬儀の基本プランだけでは、必要最低限の質素な葬儀になることが多くあります。

区民葬・市民葬儀に含まれないものは追加オプションとなり、別途料金が発生します。葬儀の追加オプションが増えるとその分料金が高くなりますので、区民葬・市民葬儀の場合でも、結果的に割高となってしまうことがあります。

また、区民葬・市民葬儀には、自治体と提携している葬儀社の中から、依頼する葬儀社を選ばなければならないという制限もあります。気になる葬儀社があっても、区民葬・市民葬儀の場合、自治体と提携している葬儀社でなければ選ぶことはできません。

このほかにも、自治体によっては、区民葬・市民葬儀において、斎場を指定していたり、葬儀の料理や返礼品などを禁止していたりすることがあります。

このように、さまざまな制限があることは、区民葬・市民葬儀の大きなデメリットといえます。

【区民葬・市民葬儀とは?】どんな人におすすめ?向き・不向きな人

区民葬・市民葬儀は、メリットだけでなくデメリットもあるため、誰にでもおすすめできる制度とはいえません。区民葬・市民葬儀を申し込む前に、区民葬・市民葬儀が「おすすめの人」と「おすすめできない人」を確認しましょう。

区民葬・市民葬儀に向いている人は、以下のとおりです。

●お金のない方・葬儀費用をおさえたい方
●質素な葬儀(白木祭壇など)を希望する方
●必要最低限のサービスを希望する方

一方、区民葬・市民葬儀に向いていない人は、以下のとおりです。

●多くの友人や知人を招いて盛大な葬儀にしたい方
●立派な葬儀で供養・お別れしたい方
●葬儀内容にこだわりたい方

区民葬・市民葬儀は、基本プランの割安料金で葬儀をおこないたい方におすすめです。

また、盛大な葬儀ではなく、質素な葬儀で十分だという方にもおすすめとなります。

反対に、参列者を大勢迎えて盛大な葬儀にしたい方には、区民葬・市民葬儀はおすすめできません。

葬儀の追加オプションが増えて料金が高くなり、区民葬・市民葬儀にしても、結果的に一般的な葬儀よりも割高になる可能性があります。

追加オプションの増加による割高料金という同じ理由で、立派な葬儀で供養・お別れしたい方、葬儀内容にこだわりたい方も、区民葬・市民葬儀はおすすめできません。

このように、区民葬・市民葬儀には、向いているケースと不向きなケースがあります。区民葬・市民葬儀を検討するときは、葬儀内容や規模を考えて、ほかの一般的な葬儀社の安いプランと比較してみましょう。

区民葬・市民葬儀とは?葬儀費用の相場と内訳

区民葬・市民葬儀の費用は、自治体ごとに異なります。

一般的な葬儀の費用相場は約100~200万円、区民葬・市民葬儀の費用相場は約50万円といわれています。

ただし、区民葬・市民葬儀では、葬儀費用以外にも、宗教者(僧侶など)へのお礼や斎場使用料金などが別途かかります。

区民葬・市民葬儀を申し込む前に、葬儀費用と内訳を確認しておきましょう。

ここでは、区民葬・市民葬儀の費用について解説します。

【区民葬・市民葬儀とは?】東京都練馬区の例・葬儀費用と内訳

区民葬・市民葬儀の費用は、自治体によって異なります。ここでは一例として「東京都練馬区」の区民葬儀の費用を解説します。(※2020年3月現在の情報)

練馬区の区民葬儀は、葬儀内容のランクによって費用が変わります。

葬儀内容のランクはご自身で自由に選ぶことができ、葬儀内容の組み合わせによって、最終的な葬儀費用が決定します。

練馬区の区民葬儀を利用する場合は、区民葬儀取扱店に直接申し込み、区役所に死亡届を提出するときに窓口で「区民葬儀券」を請求します。

練馬区の区民葬儀に含まれるものは「祭壇料金、霊柩車運送料金、火葬料金、遺骨収納容器代金」になります。練馬区の区民葬儀に含まれないものについては、別途費用がかかります。

練馬区の区民葬儀の費用は、以下のとおりです。

【祭壇料金(御寝棺含む)】(税抜)
●金らん五段飾(A1券)・・・283,800~295,800円
●金らん四段飾(A2券)・・・236,000~248,000円
●白布三段飾(B券)・・・124,000~156,000円
●白布二段飾(C券)・・・91,000~123,000円

祭壇を利用せずに「寝棺」のみを利用する場合は、以下の料金となり、別途人件費も必要になります。

●桐張棺・・・60,000~72,000円
●プリント棺・・・40,000円

満6歳以下の小人は「A1券、A2券、B券、C券」ともに「1,000円+消費税分」の割引になります。

【霊柩車運送料金】(税抜)
●宮型指定車・・・10kmまで/30,250円、20kmまで/35,750円、30kmまで/41,250円
●普通霊柩車・・・10kmまで/14,160円、20kmまで/17,760円、30kmまで/21,360円

【火葬料金(民営火葬場の料金)】(非課税)
●大人・・・53,100円
●小人(満6歳以下)・・・29,000円

【遺骨収納容器代】(税抜)
●大人用(2号一式)・・・10,900円
●大人用(3号一式)・・・9,800円
●小人用(6号一式)・・・2,300円

練馬区の区民葬儀では、上記の葬儀内容をご自身で取捨選択できます。

区民葬・市民葬儀の詳細な費用は、それぞれの自治体に電話などでお問い合わせください。

区民葬・市民葬儀とは?申込条件・申込方法を確認しましょう

区民葬・市民葬儀の「申込条件」と「申込方法」は、自治体によって異なります。

一般的に、区民葬・市民葬儀には申込条件があり、利用できる方が限られています。

区民葬・市民葬儀を申し込むときは、事前に自治体のホームページで、区民葬・市民葬儀の申込条件や申込方法、注意事項などを確認しておきましょう。

ここでは、区民葬・市民葬儀の申込条件と申込方法を解説します。

【区民葬・市民葬儀とは?】申込条件は主に2つ!住民票が重要

区民葬・市民葬儀を提供している市区町村では、各自治体のホームページにある「葬儀・お悔やみ」関連ページに、区民葬・市民葬儀などの情報を記載しています。

まずは、自治体の公式サイトに「区民葬儀、市民葬儀、規格葬儀」などについての記載があるかをチェックしましょう。

自治体が区民葬・市民葬儀を提供している場合、自治体のホームページで区民葬・市民葬儀の申込条件や申込方法、注意事項を確認することができます。

一般的な区民葬・市民葬儀の申込条件は、以下の2つです。

●自治体に故人が住んでいた(住民票がある)場合
●自治体に喪主が住んでいる(住民票がある)場合

基本的に、区民葬・市民葬儀は、その自治体に住んでいる方を対象としています。

そのため、自治体に住んでいることが証明できない(住民票がない)場合は、区民葬・市民葬儀を利用できない可能性が高くなるので注意しましょう。

故人と喪主の住んでいる自治体が異なる場合は、「故人の自治体」と「喪主の自治体」の区民葬・市民葬儀を比較してから選ぶことをおすすめします。

【区民葬・市民葬儀とは?】申込方法は2つ!自治体または提携葬儀社

区民葬・市民葬儀の申込方法も自治体によって異なりますが、一般的に以下の2つがあります。

1. 自治体に申し込む方法
2. 提携葬儀社に申し込む方法

「自治体に申し込む方法」では、役所へ死亡届を提出するときに、自治体の受付窓口で申請・手続きをします。

役所の担当者に区民葬・市民葬儀の利用希望を伝える、専用の申込用紙に必要事項を記入して提出するなどして、自治体に区民葬・市民葬儀を申し込みます。

区民葬・市民葬儀の申請が受理されたあとは、自治体と提携している葬儀社の中から利用する葬儀社を選びます。葬儀社への依頼・連絡は「自治体がおこなう場合」と「ご自身でおこなう場合」の2種類があり、自治体によって異なります。

一方、「提携葬儀社に申し込む方法」では、一般的な葬儀と同じように、自治体と提携している葬儀社に直接、区民葬・市民葬儀を申し込みます。

区民葬・市民葬儀の利用希望を伝えると、自治体と提携葬儀社の「協定料金(割安料金)」が適用されます。

上記は、一般的な申込方法になります。実際は、自治体によって申込方法が変わりますので、各自治体のホームページで区民葬・市民葬儀の申込方法を確認しましょう。

区民葬・市民葬儀とは?利用する前に知ってきたい注意点

区民葬・市民葬儀には、いくつかの注意点があります。区民葬・市民葬儀を検討するときは、事前に区民葬・市民葬儀の注意点を確認しましょう。

区民葬・市民葬儀には、以下のような注意点があります。

1. 申し込むタイミングに気をつける
2. 区民葬・市民葬儀がない自治体もある
3. 質素な葬儀であることが多い
4. 必要なものを追加すると高額になることも
5. 必ずしも最安値ではない

ここでは、区民葬・市民葬儀の注意点を解説します。

《注意点1》 申し込むタイミングに気をつける

区民葬・市民葬儀は、自治体によって申し込むタイミングが異なります。

一般的に、区民葬・市民葬儀の申し込みは葬儀前になりますが、葬儀後に区民葬・市民葬儀を申請する場合は、認められる自治体と認められない自治体があるので注意しましょう。

《注意点2》 区民葬・市民葬儀がない自治体もある

自治体によっては、区民葬・市民葬儀の制度を導入していないところもあります。

区民葬・市民葬儀の有無は、各自治体の役所またはホームページ、提携葬儀社で確認することができます。区民葬・市民葬儀を検討するときは、まず、自治体が区民葬・市民葬儀を提供しているかを確認しましょう。

《注意点3》 質素な葬儀であることが多い

区民葬・市民葬儀では、葬儀費用が安くなる代わりに、質素な葬儀になることが多くあります。

区民葬・市民葬儀に含まれるものは、葬儀における必要最低限のセットになりますので、区民葬・市民葬儀は「シンプルな葬儀」になりやすい傾向があります。

区民葬・市民葬儀の内容は自治体によって異なりますが、一般的に、質素な葬儀になることが多いということを覚えておきましょう。

《注意点4》 必要なものを追加すると高額になることも

区民葬・市民葬儀に含まれるものは、葬儀における一部の物品・サービスになります。

区民葬・市民葬儀に含まれるものは自治体によって異なりますが、一般的に「祭壇、霊柩車、火葬料金、遺骨収納容器」などが区民葬・市民葬儀に含まれています。

区民葬・市民葬儀に含まれないものは、追加する必要があり、別途料金が発生します。「ドライアイス、遺影写真、ハイヤー、返礼品、生花、飲食費、斎場使用料」といったものは、別料金となる場合が多いので注意しましょう。

《注意点5》 必ずしも最安値ではない

区民葬・市民葬儀は、区民葬・市民葬儀に含まれるものだけなら割安ですが、区民葬・市民葬儀に含まれないものを追加すると割高になることがあります。

葬儀の内容や規模によっては、区民葬・市民葬儀よりも、葬儀社の安いプランを選んだ方が葬儀費用が安くなることもあるので気をつけましょう。

区民葬・市民葬儀を検討するときは、どのような葬儀にしたいのかを考えて、葬儀社の安いプランと比較することをおすすめします。

区民葬・市民葬儀とは?理想の葬儀にするための選択肢の1つとして

この記事では、区民葬・市民葬儀について解説しました。いかがでしたでしょうか?

お葬式の準備では、葬儀の知識やマナー、香典返し、葬儀費用、弔問のお客様リストなど、さまざまなことについて考えなければなりません。特に、「最後にどんなお別れ方をしたいのか」というテーマは、故人のご家族様にとって非常に重要な問題になります。

区民葬・市民葬儀は、葬儀費用を安くおさえられる一方で、質素な葬儀になりやすいという特徴があります。また、区民葬・市民葬儀で、葬儀に必要なものを追加していくと、一般的な葬儀よりも高額になる場合もあります。

「区民葬・市民葬儀とは?」と気になっていた方は、区民葬・市民葬儀の特徴をもとに、理想の葬儀にするための選択肢の1つとして、区民葬・市民葬儀を検討してみてはいかがでしょうか?