いざというときのために、終活で「遺書」を作成しようと考えている方もいるのではないでしょうか?

遺書があれば、自分の死後、残された家族や親しい人々に「伝えたい想い」を届けることができます。

ですが、自分の気持ちや意思を伝える方法は、遺書だけではありません。遺言書やエンディングノートでも、自分の想いを相手に届けることができます。

遺書、遺言書、エンディングノートにはそれぞれ特徴があり、メリットとデメリットが異なります。

終活で遺書を作成する前に、自分にとって遺書が一番ふさわしい方法であるかを確認しましょう。

ここでは、終活における遺書の特徴、遺書と遺言書の違い、遺書の保管方法などを解説します。

終活における遺書の意味とは?自分の想いを伝えるために

終活の一環として、生前に「遺書」を作成したいと考える方がいます。

自分が亡くなったあと、家族や親しい人々に向けて「自分の想いを伝えたい」・・・そんなときは、遺書が有効です。

ですが、自分の気持ちや意思を伝えるための手段として、必ずしも遺書がベストであるとは限りません。

場合によっては、遺書よりも遺言書やエンディングノートを作成したほうが、自分や家族にとって有益になることがあります。

終活で遺書を作成する前に、遺書の特徴やメリット、遺言書やエンディングノートとの違いなどを確認しておきましょう。

ここでは最初に、終活と遺書の基本的な知識を解説します。

終活の特徴とメリット・デメリット!遺書を作成する前におさらい

そもそも「終活」とは、どのようなものでしょうか?

「終活」という言葉を知っていても、正しい意味や内容はわからないという方は少なくありません。

終活とは「自分が理想とする最期(人生の終焉、死)を迎えるための準備活動」です。

介護・医療、葬儀・お墓、遺品・遺産などについて、生前から準備を始めて、いざというときに困らないようにすることが終活の目的になります。

一昔前は「死」について考えることは不吉とされていましたが、近年は終活の広まりとともに、「将来のそなえ」として、ご自身の老後や死について前向きに考える方が増えています。

そして、終活には多くのメリットがあり、自分だけでなく、家族にとっても有益になります。

たとえば、終活には「いざというときの準備ができる」「今後の人生設計や資金計画に役立つ」「家族の負担を減らせる」といったメリットがあります。

人生100年時代といわれる現代ですが、人がいつ亡くなるかは誰にもわかりません。いざというときのために準備しておくことは、とても大切になります。

また、終活をとおして自分の人生を振り返り、やり残したことや今後やりたいことなどが見つかると、将来の目標ができて、前向きに暮らせるようになります。

具体的な目標が決まれば、今後の人生設計や資金計画も立てやすくなりますよね。

また、終活を始めることで、大切な家族の負担を減らすこともできます。

「故人の死後、どのような葬儀やお墓にすればよいかわからない」「故人の所有物が大量にあって遺品整理が大変」「故人の財産に関する必要な情報が見つからない」・・・といったことは、家族にとって大きな負担になります。

ですが、終活によって葬儀やお墓、遺品や財産などについて準備をしていれば、自分の死後、家族の負担を減らすことができます。

終活を始める理由として「家族に迷惑をかけたくない」という方はたくさんいますので、大切な家族の負担を減らせることは、終活の大きなメリットといえます。

終活は、定年退職後のセカンドライフを迎えた「シニア世代」の方が主に取り組んでいますが、すでに30代・40代・50代から終活を始めている人もいます。

終活には多くのメリットがあり、早く始めるほどよいとされていますので、心身がまだ元気なうちから終活に取り組んでみましょう。

終活の遺書とは?特徴とメリット・デメリットを解説

遺書とは「死後のために書き残す文書(または手紙)」のことであり、「遺言状」や「書き置き」とも呼ばれます。

遺書は「死を覚悟した人が残す書面」であり、遺書の書き方に特別なルールはありません。遺産相続に関することや、配偶者または子、遺族等への想いや訓戒など、自由な内容を遺書に書き残すことができます。

遺書を送る相手は、家族や親族、友人・知人が一般的ですが、学校や会社、マスメディアなどが対象になることもあります。

遺書を書くときは、自筆が原則となっています。これは、本人が書いた遺書であることを証明するために、ワープロではなく、筆跡の真似が困難な自筆が選ばれているからです。

そして、遺書の大きな特徴として、遺書には「法的効力がない」ことも覚えておく必要があります。

遺書は手紙のようなものであり、法的効力はありません。そのため、財産などに関することを遺書に書いても、法律で縛ることはできません。

遺書を作成するときは、遺書が「死後のために書き残す手紙」のようなものであること、遺書の書き方や内容、送る相手などを自由に選べること、ただし、法的効力はないことを覚えておきましょう。

遺書と遺言書の違い。終活におすすめの方法はどちらが正解?

「遺書」と「遺言書」、字面は似ていますが内容は大きく異なります。

遺書と遺言書にはそれぞれ特徴があり、メリットとデメリットも違ってきます。

自分の想いを伝えるための手段として、遺書と遺言書のどちらがふさわしいのかを確認しましょう。

ここでは、終活における遺書と遺言書の違いを説明します。

終活における遺書と遺言書の特徴!法的効力の有無が決め手

遺書と遺言書は、どちらも故人の想いを伝えるための手段になります。そのため、終活をするときに、遺書を作成するか、それとも遺言書を作成するのかということで迷われる方もいます。

結論から先に申しますと、プライベートな内容は「遺書」、財産などについての内容は「遺言書」がおすすめです。

遺書は、本人が自由に書くことができる「私的文書」になります。そのため、遺書の書き方や内容、保管方法などについて法的な制約はありません。遺書は何通も作成できますし、誰にでも送ることができます。

自分の死後、家族や友人などに伝えたいメッセージがある場合は、手軽に作成できる遺書が便利です。

ただし、遺書には法的効力がないため、財産などに関することを遺書に書いても、法律で縛ることはできません。

一方、遺言書はあらかじめ定められた書式やルールに則って作成しなければならない「法的文書」になります。遺言書の書き方や内容、保管方法などについては民法によって定められており、法的な制約を受けます。

ですが、遺言書には法的効力がありますので、遺言書の内容によって法律で縛ることができます。

たとえば、相続人や相続分を指定したり、特定の相続人を排除したりする・・・といった財産などに関することは、法的効力のある遺言書に書いておくと安心です。

このように、遺書と遺言書にはそれぞれ特徴があり、メリットとデメリットが異なります。

終活で遺書と遺言書のどちらかを用意する場合は、プライベートなことは「遺書」、財産などに関することは「遺言書」というように区別するとよいでしょう。

遺言書の特徴とメリット・デメリット!終活では遺書との使い分けが◎

終活の一環として「遺言書」を作成する方もいます。

遺言書とは「自分の意思を書き残した書面のこと」であり、主に相続などに関することが書かれています。

遺書はプライベートな内容の私的文書ですが、遺言書は財産などについて書かれた法的文書になります。

終活で遺言書を作成する場合は、遺言書の特徴と注意点を事前に確認しておきましょう。

ここでは、遺言書の基礎知識を解説します。

終活の遺言書とは?相続トラブルを回避するための手段として有効

遺言書とは、相続などに関することを記述した書面であり、死後、法律上の効力が生じる法的文書になります。

人が亡くなったあと、故人の財産は「遺産」となり、遺産相続が発生します。

そして、遺言書がない場合は、一般的に民法で定められた「法定相続人」と「法定相続分」を参考に、相続人全員の相談による「遺産分割協議」によって、遺産相続の分配が決定します。

【法定相続人】・・・民法で定められた相続人のこと
【法定相続分】・・・民法で定めれた相続分のこと

ですが、遺産相続の話し合いがスムーズにいかず、親族間でトラブルが起こるケースは多々あります。

仲の良かった家族が、故人の遺産をきっかけに関係が壊れてしまった・・・という話は珍しくありません。

そして、このような相続トラブルを回避するときの手段として、遺言書は有効になります。

故人の死後、遺言書がある場合は、遺言書の内容が優先されます。

そして、遺言書では故人の意思を表明することができ、相続や家族などに関することを指定できます。

たとえば、特定の人物・団体に相続させる(遺贈)、特定の人物に相続させない(相続排除)、誰に何をどのくらい相続させる(相続分)、婚外子を認知する(遺言認知)、特定の人に遺言を執行してもらいたい(遺言執行者)・・・といったことを、遺言書によって指定することができます。

相続などに関することは、遺書やエンディングノートにも記載できますが、法的効力があって法律で縛ることができるのは遺言書だけになります。

相続トラブルは、遺産額5,000万円以下の場合に発生することが7割で最多だといわれており、少量の遺産額でも家族でもめる可能性があります。(※2015年度の司法統計年報・参考)

自分の死後、遺産相続のことで家族が争わないようにするためにも、終活で遺言書の作成を検討してみましょう。

遺言書の種類は3つ!自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言

遺言書には「普通方式」と「特別方式」の2種類があり、一般的な遺言書は「普通方式」になります。

【普通方式】・・・通常作成する遺言書。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種ある
【特別方式】・・・疾病などの事情で命を落とす危険が迫っている場合に作成する遺言書

終活で遺言書を作成する場合は、一般的な「普通方式」になります。

そして、普通方式遺言には「自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言」の3種類があります。

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言では、それぞれ特徴とメリット・デメリットが異なるので注意しましょう。

自筆証書遺言の特徴とメリット・デメリット!自筆で手軽に作成

自筆証書遺言とは、本人が自筆で作成する遺言書です。

財産目録はパソコンのワープロでも可能ですが、遺言書の内容、作成日、署名はすべて自筆になります。そして、遺言者の押印が必要になります。

自筆証書遺言のメリットは、ペンと紙を用意すれば、誰でも手軽に作成できることです。また、ほかの遺言書に比べて、費用が安いというメリットもあります。

ただし、自筆証書遺言は一定の書式に則って作成する必要があり、書き方や内容に不備がある場合は、遺言書が無効になる可能性があります。

また、自筆証書遺言の原本は本人が保管するため、紛失・盗難・改ざんなどのリスクも高くなります。このほかにも、自筆証書遺言の場合、故人が亡くなっても遺言書が発見されない、発見されても破棄・隠匿されるという可能性が考えられます。

そして、無事に書遺言が発見されても、自筆証書遺言の場合、発見者が未開封の遺言書を家庭裁判所に持参して「検認」を受ける必要があります。

公正証書遺言の特徴とメリット・デメリット!安全・確実に作成

公正証書遺言とは、遺言者が2名以上の証人とともに公証役場へ行き、公証人の前で遺言の内容を口述して、公証人に作成してもらう遺言書です。

公証人は、裁判官、検察官、弁護士などを長年経験した人の中から法務大臣によって選ばれる公務員であり、法律の専門家になります。

そのため、公証人が作成する公正証書遺言では、書式や内容の不備による遺言書の無効というリスクがほとんどなくなります。また、公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、紛失・盗難・改ざんなどの恐れもありません。

自筆証書遺言に比べると費用はかかりますが、確実で安全な遺言書を作成したいときは、法律のプロに作成・保管してもらえる公正証書遺言がおすすめです。

公正証書遺言を作成するときは、2名以上の証人が必要になります。証人は誰でもなれるわけではなく、未成年者(20歳未満の人)、推定相続人や受遺者(これらの配偶者および直系血族含む)などは、公正証書遺言の証人にすることができません。

公正証書遺言の証人を選ぶときは、条件を満たしており、信頼できる人物に頼みましょう。

秘密証書遺言とはの特徴とメリット・デメリット!秘密で作成

秘密証書遺言とは、自分で遺言書を作成したあと、証人2名とともに公証役場へ行き、公証人に遺言書の存在を証明してもらう遺言書です。

秘密証書遺言は自筆、代筆、ワープロなどで作成することができます。

秘密証書遺言のメリットは、遺言の内容を誰にも知られずに、本人によって遺言書が作成されたことを証明できる点です。

公正証書遺言では、遺言の内容を公証人と証人に知られてしまいますが、秘密証書遺言は作成した本人しか遺言の内容がわかりません。

そのため、遺言の内容を誰にも知られず、なおかつ遺言書が本人によって作成されたことを証明したいときに秘密証書遺言はおすすめです。

ただし、秘密証書遺言にはデメリットもあります。

たとえば、秘密証書遺言の内容や作成方法に不備があった場合、遺言書が無効となってしまう可能性があります。

また、秘密証書遺言の原本は本人が保管しなければならないので、死後に遺言書が発見されなかったり、紛失・盗難などが起きたりする恐れもあります。

遺言書を作成するときは、自筆証書遺言または公正証書遺言が一般的であり、秘密証書遺言を作成する方はあまり多くありません。

遺言の内容を秘密にする場合は自筆証書遺言でも可能であり、安全性と確実性では公正証書遺言のほうが優れているからです。

ですが、あえて秘密証書遺言を選ぶ方もいますので、ご自身の条件にふさわしいときは秘密証書遺言の作成を検討してみましょう。

終活における遺言書の注意点!無効にならないためのルール

遺言書を作成するときには、いくつかの注意点があります。

何も知らないまま遺言書を作成してしまうと、遺言書が無効になってしまう可能性があるので気をつけましょう。

遺言書の注意点は、以下のとおりです。

【自筆証書遺言】・・・代筆やワープロで作成したものはNG。署名・押印がないものはNG
【公正証書遺言】・・・本人が認知症などで「遺言能力」がないものはNG。証人が条件に該当しないものはNG
【秘密証書遺言】・・・署名・押印がない、署名が自筆でない、遺言書本文と封筒の押印が同一でないものはNG

自筆証書遺言では「自筆」で作成することが前提になりますので、代筆やワープロで作成されたものは、遺言書が無効になる可能性があります。また、署名、押印がない場合も、遺言書が無効になる可能性が高くなります。

公正証書遺言では、本人が認知症などで遺言書の作成時に「遺言能力」がないと判断された場合、遺言書が無効になる可能性があります。また、公正証書遺言の証人が推定相続人であるなど、証人の条件を満たしていない場合も遺言書が無効になる可能性が高くなります。

秘密証書遺言では、署名・押印がない場合、署名が自筆でない場合は、遺言書が無効になる可能性があります。また、遺言書の本文と封筒の封印の押印(ハンコ)が異なる場合も、遺言書が無効になってしまう可能性があるので注意しましょう。

終活の遺言書とエンディングノートの違いとは?法的効力の有無で判断

遺言書とエンディングノートの違いは、記載内容と法的効力の有無になります。

遺言書には相続などに関することを書き、エンディングノートには何でも好きなことを書くことができます。

介護や医療、葬儀やお墓、家族へのメッセージなどは、エンディングノートに記載するとよいでしょう。

そして、遺言書には法的効力があり、エンディングノートは法的効力がないことも大きな違いになります。

エンディングノートは「自分の要望や気持ちを家族に届けるためのノート」であり、いざというときに必要な情報を家族に伝えることができる便利なツールです。

ですが、エンディングノートには法的効力がありませんので、遺言書のように法律で縛ることはできません。

財産などに関することは「遺言書」、葬儀やお墓などに関することは「エンディングノート」に記載しましょう。

終活における遺書や遺言書の保管方法!紛失等のリスクを避けるために

遺書や遺言書を作成するときは、保管方法も大切になります。

保管方法を間違えてしまうと、遺言書が発見されなかったり、紛失や盗難などが起きたりする可能性が高くなります。

遺書や遺言書が正しく活用されるためにも、遺書などの保管方法を確認しておきましょう。

ここでは、遺書や遺言書の保管方法や注意点を解説します。

遺書や遺言書の保管方法!わかりやすくて安全な場所がオススメ

遺書を保管するときは、封筒などに入れて、なるべくわかりやすい保管場所を選びましょう。

自筆の遺書は、鍵をかけられる机や耐火金庫の中など、見つけてもらいやすい場所がおすすめです。

ワープロ作成の遺書をデータとしてパソコンに保管する場合は、きちんと発見されるように、遺書の保存ファイルがある場所やパソコンのパスワードなどを、事前に家族に伝えておきましょう。

一方、遺言書を保管するときは、紛失・盗難・改ざんなどのリスクを回避するためにも、保管方法がとても重要になります。

特に、遺言書を自作する「自筆証書遺言」は原本が1部しかありませんので、保管方法については細心の注意を払わなければなりません。また、「秘密証書遺言」も本人が保管するため、保管方法には気をつける必要があります。

自分で遺言書を保管する場合は、貸金庫や耐火金庫、鍵をかけられる机の中などを検討してみましょう。ただし、あまりにもわかりにくかったり、故人の死後、簡単に取り出せなかったりする保管場所を選ぶときは要注意です。

遺言書には「公正証書遺言」というものがあり、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。

遺言書の保管方法に不安があるときは、遺言書を「公正証書遺言」にすることを検討してみましょう。

終活の遺書は自分の想いを伝える手段!状況にあわせて選択を

この記事では、終活の遺書について解説しました。いかがでしたでしょうか?

遺書は「死後のために書き残す文書」であり、死を覚悟した人が残す手紙になります。そして、遺書の書き方に特別な決まりはなく、遺書の内容や送る相手は自分で自由に選ぶことができます。

ですが、故人の意思を伝える方法には、遺書だけでなく、「遺言書」や「エンディングノート」もあります。

誰かへの私的なメッセージは「遺書」、相続などに関することは「遺言書」、介護や医療、葬儀やお墓などに関することは「エンディングノート」に記載するなどして、上手に使い分けるとよいでしょう。