6 0歳は還暦の年であり、一般的に定年退職を迎える年齢になります。そして、還暦や定年退職、セカンドライフなどをきっかけに、将来にそなえて60代から終活を始める方は少なくありません。

終活は早く始めるほどメリットが大きいといわれますが、60代から終活を始めても決して遅くはありません。

むしろ、定年退職を迎えて時間に余裕があり、まだ元気に動ける60代は、終活を始めるベストタイミングになります。

自分と家族のために、60代から終活を始めてみましょう。

ここでは、終活60代の特徴とメリット、やるべきこと、エンディングノートなどについて解説します。

終活は誰のために?60代から考えたい将来のこと

60歳は還暦の年であり、一般的に定年退職を迎える年齢になります。そして、定年退職後は、第二の人生「セカンドライフ」がスタートします。

一概に60代といっても、さまざまな方がいます。

昔は、60歳になって定年退職を迎えたあとは、社会的なリタイアをして隠居生活を過ごす方一般的でしたが、現在は60代になっても仕事を続けたり、趣味を極めたりする方が増えています。

そして今は「人生100年時代」といわれており、医療技術の進歩などによって、世界的に長寿化が進んでいます。日本人の「平均寿命」と「健康寿命」は年々延びつつあり、健康に対する意識も高まって、60代になってもまだまだ元気な方はたくさんいます。

そのため、60代の中には「自分の終活はまだ早い・・・」と思われている方もいます。

ですが、その一方で、自分の還暦や定年退職をきっかけに、60代から終活をスタートする方もいます。

60代になって定年退職を迎えると、以前よりも時間にゆとりが生まれます。自分と向き合う時間が増えて、自分と家族の将来について、真剣に考え始める方は少なくありません。

60代という人生の節目をきっかけに、今から終活に取り組んでみましょう。

ここでは最初に、終活の特徴やメリットといった基礎知識を解説します。

そもそも終活とは?シニア世代(60代含む)の7割以上が興味アリ

終活とは「自分の理想とする老後・最期を迎えるための準備活動」です。

人生の終わりに向けて、生前からさまざまな準備をすることが終活の内容になります。

終活の内容には「エンディングノートの作成、生前整理、財産整理、介護や医療・葬儀やお墓の準備」などがあります。そして終活の内容は、自分で必要なものを選ぶことができます。

終活は、60代以上のシニア世代だけでなく、20代・30代・40代・50代の世代でもすでに取り組んでいる方がいます。

「終活」という言葉(造語)は2009年に生まれて以来、テレビや新聞、雑誌など多くのメディアに取り上げられてきました。「終活」は2010年の流行語大賞にノミネートされており、2012年の流行語大賞トップ10にも選ばれています。

2017年のネット調査では、「終活」という言葉を知っている50代以上の方は9割強、実際に終活をおこなっている50代以上の方は7割という結果が出ています。(※公益財団法人地方経済総合研究所資料・参考)

そして、実際に終活をおこなっている50代以上の方は0.5割ほど、今後終活をしたいと考えている50代以上の方は7割となっています。

このように、50代や60代では、終活に興味のある方が多いということがわかっています。

終活を早めに始めることのメリット!60代は自分と家族のために

終活には、さまざまなメリットがあります。そして、終活は早めに始めるほどメリットが大きくなるといわれています。

たとえば、終活をおこなうと、老後や最期の準備ができるだけでなく、家族の負担を減らしたり、今後の人生をより豊かなものにしたりすることができます。

60代では、自分の親の老後や最期を経験している方が少なくありません。

そして、親の介護や死別のときに苦労された方は、自分の家族に同じ思いはさせたくないと感じる人もいます。

日本人の平均寿命は「男性81.25年、女性87.32年」であり、健康寿命は「男性72.14年、女性74.79年」となっています。(※平成30年簡易生命表等資料・参考)

ですが、人間の寿命には個人差があり、いつ亡くなるかは誰にもわかりません。

そして、もし自分に何かあっても、60代から終活を始めていれば、大切な家族の負担を減らすことができます。

また、終活をとおして今までの人生を振り返り、やり残したこと・やってみたいことなどに気がつくと、今後の目標ができて前向きに暮らせるようになります。

特に、60代の終活には「まだ元気なうちに終活できる」「時間をかけて終活に取り組める」「終活によってセカンドライフをより豊かにできる」という3つのメリットがありますので、終活に興味のある方は今からスタートしましょう!

終活を始めるタイミングはいつ?60代が適齢期だといわれる理由

一般的に、終活は定年退職後に始める方が多く、60代以上のシニア世代で終活に取り組んでいる方は少なくありません。

男女ともに高齢になるほど終活に興味を持つ人は増えますが、特に女性は、男性よりも終活に関心のある方が多いようです。

終活を始めるタイミングは、人によって異なります。

終活を20代から始める方もいれば、70才から終活に取り組む方もいます。このように、その人にとって都合の良いタイミングで始められることは、終活の大きな魅力といえます。

ですが、あまり高齢になってから終活を始めると、心身が追いつかないで苦労する可能性が高くなります。

終活をスムーズに進めるためには、ある程度の「気力・体力・判断力」が必要になりますので、なるべく早い年齢から終活を始めるほうが安心です。

60代になると、病院の薬を飲み始めたり、大きな病気にかかったりする方も珍しくありません。万が一にそなえて、まだ元気に動ける今のうちから終活に取り組んでみましょう。

終活をする60代の特徴。取り組む理由はさまざま

60代から終活を始めるきっかけは、人によって異なります。

たとえば、還暦や定年退職を迎えたタイミングで終活を始める方もいれば、親の介護や看取りをきっかけに60代から終活を始める方もいます。

ここでは、終活をおこなう60代の特徴を解説します。

60代から終活を始める6つの理由。将来の不安を解消したい心理

終活をおこなう理由は人それぞれですが、60代の方は、主に以下のような理由が挙げられます。

●家族に迷惑をかけたくない
●病気や介護にそなえるため
●葬儀など自分の希望を家族に伝えるため
●今までの人生を整理するため
●人生の最後まで自分らしく生きるため
●今後の人生を考えるため

特に「家族に迷惑をかけたくない」という思いは、60代の方にとって、終活を始める大きな動機になっています。また、「自分が病気や介護になったときにそなえたい」ということも、60代の方が終活を考える大きな理由になります。

60代で終活に興味を持たれる方は、将来に不安(介護、医療、葬儀、財産、相続など)を感じていることが少なくありません。

終活によって将来の不安を解消したい・・・そんな気持ちが、60代の終活を後押ししているようです。

終活60代にオススメ!今からできる8つのこと

60代の終活で、何から手をつければよいのかわからない方もいます。

60代の終活では、家族のためにできること、そして自分でなければできないことを優先的におこないましょう。

60代の終活で主にやるべきことは、以下のとおりです。

1. 終活していることを伝える
2. エンディングノートを作成する
3. 遺言書を作成する
4. 生前整理(断捨離)をする
5. 葬儀や遺影写真を決める
6. お墓を決める
7. 終の棲家を探す
8. 老後資金を準備する

ここでは、60代の終活でやるべきことを解説します。

《終活60代でやること1》終活していることを伝える

終活では、自分の理想とする老後や最期を迎えるために、さまざまなことを準備します。

ですが、あなたの介護、医療、お葬式、お墓、財産などについては、家族にも大きな影響をあたえます。

自分だけで将来のことをすべて決めてしまうと、あとで家族間のトラブルが起こる可能性がありますので、終活はなるべく家族と話し合いながら進めましょう。

そのためにも、まずは、自分が終活していることを家族に伝えることが大切です。

終活に対する真剣な気持ちを伝えれば、家族も納得して終活に協力してくれることでしょう。

《終活60代でやること2》エンディングノートを作成する

60代の終活では、エンディングノートの作成がおすすめです。

エンディングノートとは「自分の気持ちや意思を家族に伝えるためのノート」になります。

介護・医療、葬儀・お墓、遺品・遺産などについての要望がある場合は、エンディングノートにその旨を記しておきましょう。

自分に何かあったときでも、エンディングノートがあれば、家族に必要な情報を伝えることができます。

大切な家族の負担を減らすためにも、60代の終活ではエンディングノートを作成しましょう。

エンディングノートの主な項目(書く内容)は、以下のとおりです。

●自分のこと・・・氏名、生年月日、住所、本籍地、家族構成、自分史など
●財産のこと・・・金融機関名、口座番号、保険、有価証券、不動産などの情報
●各種連絡先・・・家族、親族、友人、知人、会社関連の連絡先など
●介護・医療のこと・・・理想の介護、アレルギー、延命治療の方針など
●葬儀・お墓のこと・・・理想の葬儀・お墓、遺影写真の有無・保管場所など

エンディングノートの内容は、自分の状況にあわせて、何度でも追加・変更・修正することができます。

エンディングノートを作成した場合は、エンディングノートの存在と保管場所を家族に知らせておきましょう。

《終活60代でやること3》遺言書を作成する

「遺言書」とは、法的効力のある契約書類になります。一方、エンディングノートは個人メモのようなものであり、法的効力はありません。

そのため、自分の財産(遺産相続)について要望がある場合は、法的効力のある「遺言書」を作成すると安心です。

誰に何をどのくらい相続させたい、または相続させたくない・・・などの要望は、エンディングノートではなく、遺言書に記しておきましょう。

自分の死後、遺産が残る場合は、家族間で相続トラブルが起こる可能性があります。

どんなに仲のよい家族でも、お金が絡むと関係が悪くなるケースが多々ありますので、自分の死後、遺産が残る場合は「遺言書」を作成しておくと安心です。

遺言書は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の主に3種類あります。ですが、紛失・改ざん・盗難などのリスクを回避するためにも、遺言書を作成する場合は、専門家に依頼する「公正証書遺言」がおすすめです。

遺言書は自作できますが、書き方を間違えてしまうと、遺言書が無効になってしまう可能性があります。

遺言書の作成で困ったときは、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家にお問い合せして相談してみましょう。

《終活60代でやること4》生前整理(断捨離)をする

生前整理とは「生きている間に身辺整理をすること」です。

一般的に、長く生きるほどモノが溜まりやすくなります。

モノが多い暮らしでは、家の中がごちゃごちゃしてケガや転倒のリスクが高くなったり、探し物が見つかりにくくなったりするなどのデメリットがあります。

また、モノが多いと、自分の死後に「遺品」も増えて、「遺品整理」をする方(一般的には家族)の負担も大きくなってしまいます。

安全な住環境で暮らすために、また、遺品整理をおこなう家族の負担を減らすためにも、60代から生前整理を始めてみましょう。

《終活60代でやること5》葬儀や遺影写真を決める

60代の方は、自分の葬儀について、ある程度決めておくと安心です。

理想的な葬儀の内容・規模・予算などを決めて、事前にいくつかの葬儀プランを調べておきましょう。

現代は、さまざまなニーズに対応できる葬儀プランが用意されています。

「一般葬、家族葬、一日葬、直葬(火葬)」など、自分が希望する葬儀をある程度決めておきましょう。そして、理想の葬儀プランが決まれば、必要な葬儀費用もわかり、今後の資金計画が立てやすくなります。

葬儀プランや葬儀費用、喪主を依頼したい人などについては、事前に家族と話し合っておきましょう。

葬儀に関することは、エンディングノートにも書いておくと安心です。

このほかにも、60代の終活では、遺影写真を用意しておくこともおすすめです。

昔は「無表情」の遺影写真が一般的でしたが、現在は「笑顔」の遺影写真を利用するケースも増えています。

最後のお別れ(葬儀のとき)に、どのような写真でみんなを迎えたいのかを考えて、自分の遺影写真も用意しておきましょう。

《終活60代でやること6》お墓を決める

新しいお墓が必要な方は、60代から自分のお墓を探しましょう。

お墓を探すときは、「お墓の場所、お墓の種類、お墓の条件(宗派、予算など)、将来的なお墓継承の有無」を目安にすると、理想のお墓を見つけやすくなります。

近年は、お墓の種類も多様化しており、「一般墓、納骨堂、永代供養、自然葬(樹木葬、海洋葬、宇宙葬)」などがあります。

気になるお墓の資料を集めて、できれば実際に、お墓を見学してみましょう。

理想のお墓が見つかると、お墓を購入するために必要な費用もわかります。

《終活60代でやること7》終の棲家を探す

60代の終活では「終の棲家」について考えることも大切です。

終の棲家とは「人生の終わりまで暮らす場所」のことを意味します。

多くの方が「最期まで自分の家に住み続けたい」と願っていますが、認知症になったり、寝たきりになったりした場合は、一人で生活することが困難になります。

人間は高齢になるほど心身が衰えて介護が必要になる可能性が高くなりますので、60代の終活では「終の棲家」についても考えてみましょう。

有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(介護型)、サービス付き高齢者向け住宅(自立型)、ケアハウス、自立型有料老人ホーム、特養ホームなどついて、今から調べておくと安心です。

《終活60代でやること8》老後資金を準備する

理想の老後を迎えるためには、ある程度の老後資金が必要になります。

老後の生活費、医療費、介護費、葬儀費用、お墓の費用などをある程度計算して、必要な老後資金を60代のうちから準備しておきましょう。

場合によっては、保険やローンを見直したり、生活費を節約したり、財産の一部を売却したりするなどの工夫が必要になるかもしれません。

2019年に金融庁の金融審査会がまとめた報告書によると、年金収入だけの場合、必要な老後資金は2,000万円とされています。ですが、実際に必要となる老後資金には個人差があります。

自分に必要な老後資金を計算して、今から準備しておきましょう。

終活60代に必要なエンディングノートとは

終活の一環として、エンディングノートを書いている方は少なくありません。

エンディングノートには多くのメリットがありますので、60代から終活をおこなう方は、まずエンディングノートの作成から始めてみましょう。

ここでは、終活60代に必要なエンディングノートについて解説します。

終活60代におすすめ!エンディングノートの特徴とメリット

エンディングノートとは「自分の気持ちや意思を家族に伝えるための手段」です。

自分の介護・医療、葬儀・お墓、遺品・遺産、家族へのメッセージなどは、エンディングノートに記載しておきましょう。

自分に何かあったとき、エンディングノートがあれば、残された家族がエンディングノートを参考にして物事を判断できるようになります。

たとえば、預金通帳、クレジットカードなどの保管場所やパスワード、保険のことなどがわからないと、自分に何かあったときに、家族がお金を利用できなかったり、必要な手続きができなかったりする可能性があります。

ですが、エンディングノートに貯金通帳やクレジットカード、保険のことなど大切な情報が記されていれば、いざというときに家族の助けになります。

また、自分が認知症などで意思の疎通ができなくなった場合、介護や延命治療などについての判断は、家族にゆだねられます。大切な人の生死にかかわることを決断するときは、精神的な負担がとても大きくなります。

ですが、エンディングノートに介護や延命治療などについての要望を書いておけば、家族があなたの意思を尊重して物事を判断しやすくなります。

エンディングノートには「遺言書」のように法的効力はありませんが、自分の思いや希望を伝えたり、家族に役立つ情報を提供したりすることができます。

また、エンディングノートに自分のこと(自分史)や家族へのメッセージを書いていれば、あなたが亡くなったあと、エンディングノートは家族にとって「大切な形見」になることでしょう。

このように、エンディングノートには多くのメリットがあります。60代の終活では、エンディングノートの作成を検討してみましょう。

終活は60代がベストタイミング!元気なうちから始めましょう

この記事では、60代の終活について解説しました。いかがでしたでしょうか?

「人生100年時代」といわれる現在ですが、終活はまだ元気な年齢・60代の頃から始めるほうが安心です。

還暦や定年退職、セカンドライフなどをきっかけに、60代から終活を始める方は少なくありません。そして、60代の中には、すでに自分の親の介護や看取りを経験している方もいます。

大切な家族に迷惑をかけないために、また、自分の人生をより豊かなものにするためにも、60代から終活を始めて将来にそなえてみてはいかがでしょうか?