近年、「おひとり様(おひとりさま)」という造語は、テレビや新聞、雑誌などの各種メディアによって日本中に広まり、私たちにとって身近な言葉の1つとなりました。

「おひとり様」という言葉の意味は幅広く、「独身者」だけでなく、「一人で特定の行動をする方」や「一人暮らしの方」なども、「おひとり様」に該当します。

一人暮らしのおひとり様にとって、自分の老後や最期について考えることはとても大切です。幸せな老後・最期を迎えるためにも、おひとり様の終活を始めてみましょう。

ここでは、一人で迎える終活の特徴、やるべき準備、孤独死の対策、生前契約などについてわかりやすく解説します。

一人で迎える終活とは?おひとりさまが幸せな最期を迎えるために

「おひとり様」といっても、いろいろな方がいます。たとえば、生涯独身の人、離婚・別居した人、夫・妻に先立たれた人、家族と離れて一人暮らしの人、身寄りのない人・・・など、おひとり様でいる理由は、人によってさまざまです。

おひとり様には「自分1人で自由にできる」というメリットがある反面、「多くのことを自分だけでやらなければならない」というデメリットもあります。

特に、人生の老後や最期については、おひとり様ならではの準備が必要になります。医療、介護、葬儀、お墓、遺品、財産などに関する心配事を解決するためにも、おひとり様の終活について学びましょう。

まずは、おひとり様の終活について基本的なこと・基礎知識を確認しましょう。

ここでは、一人で迎える終活の特徴とメリット・デメリットを解説します。

一人で迎える終活が必要な理由。おひとりさま終活の特徴

終活とは、「人生の終わりに向けた活動」のことです。自分の老後や介護、亡くなったときのことなどを、今から考えて決めておく作業が「終活」になります。

終活にはとても多くのメリットがあり、終活を早く始めるほど、今後の人生に安心と幸せをもたらすことができます。

どのような老後を過ごしたいか、どのような介護を受けたいか、終末医療・延命措置はどうするか、葬式やお墓はどのようにするか、遺品や遺産はどうするか・・・といった老後や死後にまつわる不安は、終活を始めることで解消できます。

特におひとり様にとっては、自分で物事が判断できるうちに、老後や死後について準備しておくことはとても大切になります。近年は、高齢者の「孤独死・孤立死」が社会問題となっており、少子高齢化や核家族の増加とともに、人知れずに独りで亡くなる方が増えています。

おひとり様の終活は、孤独死のリスク低下にもつながり、自分だけでなく、家族や親しい人たちも安心させることができます。

終活のデメリットは、自分の老後や死後について具体的に考えるため、人によっては不安を感じる可能性があることです。ですが、自分の老後や死後について真剣に取り組むことは、あなたの希望とする未来・最期を迎えるために必要なことです。

終活で自分の人生を振り返り、やり残したこと、これからやりたいことに気づくと、今後の人生ですべきことが見えてきます。終活には、老後や死後にまつわる不安を解消するたけでなく、今後の人生をより豊かに過ごすためのきかっけになる、というメリットもあるのです。

終活はいつでも始めることができ、自分のペースで進めることができます。終活を始める年齢は定年後の65歳以上が多いですが、20代や30代から終活をスタートしている人もいます。

人間は、年を重ねるほど心身ともに衰えていきます。今はまだ大丈夫でも、ある日突然体が動かなくなったり、判断力が鈍くなったりするかもしれません。

そのため、おひとり様の終活は、いつから始めても早いということはありません。

あなたにとって理想の老後・最期を迎えるためにも、なるべく早めにおひとり様の終活を始めてみましょう。

一人で迎える終活でやるべきこと。おひとりさまに必要な5つの準備

終活では「身の回りの整理、財産整理、遺言書作成」など、やるべきことがたくさんあります。そのため、終活は短期間で終わらせるのではなく、自分のペースでゆとりをもって取り組むことが大切になります。

まずは、あなたが取り組みやすいことから終活を始めてみましょう。

おひとり様の終活でやるべきことのチェックリストは、以下のとおりです。

【おひとり様の終活でやるべきこと】

1. 身の回りを整理する(遺品整理)
2. 財産を整理する(お金・財産整理)
3. 遺言書を作成する(遺産相続)
4. エンディングノートを作成する
5. 葬儀やお墓に関することを決める

ここでは、おひとり様の終活でやるべきことを、1項目ずつ丁寧に解説します。

《終活でやること1》身の回りを整理する

自分が亡くなった後のことを考えて、身の回りの整理をしましょう。

日常生活に必要な最低限の物を残して、残りの不要な物は売却・処分することが大切です。愛着のある物を無理に捨てる必要はありませんが、長年使用していない物は勇気をもって処分しましょう。そして、なるべく物は買わないようにしてシンプルに暮らすことがおすすめです。

身の回りを整理して物を減らすと、住居で怪我をするリスクが減ったり、遺品整理をする家族の負担を減らしたりすることができます。また、生前に身の回りを整理することで、人生の最期に向けて自分の気持ちも整理することができます。

一人で身の回りの整理ができないときは、「家事代行サービス」や「遺品整理の専門業者」などに依頼する方法もあります。

《終活でやること2》財産を整理する

終活では、財産整理も大切になります。

預金、不動産、有価証券、貴金属といった自分の財産が、今どのくらいあるのかということを日頃から把握しておきましょう。生前のうちに財産整理をすることで、老後に必要な資金や死後にかかる費用などが計算しやすくなります。

財産整理では、今ある財産の把握だけでなく、財産をまとめたり、分類したりすることも重要です。財産がばらばらに散らばっていると把握しづらくなり、生前や死後のお金の管理がやりにくくなってしまいます。

複数の銀行口座があるときは、なるべく1つの銀行口座にまとめましょう。そして、メインの銀行口座から医療費や介護費、葬儀代、お墓代などを引き落とせるようにしておくと、老後資金が管理しやすくなります。

あまり使用していない金融機関のカードは解約して、手持ちのクレジットカードは1、2枚におさめることもおすすめです。

また、自分の死後に財産が残る場合は、遺産相続についても決めておきましょう。遺言書で「誰に何を相続させるのか」を決めておくと、親族間の金銭トラブルを未然に防ぐことができます。

《終活でやること3》遺言書を作成する

自分が亡くなった後に遺産が残る場合は、生前に遺言書を作成しておきましょう。遺言書を作成することで、あなたの希望する遺産相続を実現できます。

遺言書がない場合は、法律に則って、相続する人「法定相続人」が決まります。

法定相続人には優先順位があり、「第一順位(子・孫)」「第二順位(父母、祖父母)」「第三順位(兄弟姉妹)」となっています。故人の配偶者は「配偶者相続人」として法定相続分(1/2、2/3、3/4など)を相続します。

ですが、遺言書を作成すれば、法定相続人の優先順位や相続分を変えることができます。遺言書の作成は、遺産相続争いを未然に防ぐことにもつながるので、たとえ遺産が少ない場合でも、遺言書の作成をおすすめします。

遺言書の作成は、おひとり様で親族のいない方にとっても重要になります。相続人がいない遺産は、すべて国のものになります。相続する身内がいない場合でも、「お世話になった人に相続させたい」「特定の団体に寄付したい」という希望があるときは、遺言書を作成しましょう。

遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。おひとり様におすすめの遺言書は、法律のプロ・公証人に作成してもらう「公正証書遺言」となります。

手続きや費用はかかりますが、公正証書遺言には遺言能力があり、不備や無効、紛失・改ざんのリスクが少ないというメリットがあります。公正証書遺言は「公正役場」で保管してもらえます。

《終活でやること4》エンディングノートを作成する

エンディングノートは、自分の希望する老後・最期を実現するために、家族や周囲の人々に伝えるための手段です。

たとえば、どのような介護を望むのか、余命わずかの「終末期」ではどのような治療・緩和ケアを受けたいか、自分の死を誰に伝えてほしいのか・・・といった希望を、エンディングノートに書き残しておきます。

また、葬儀やお墓、死後の遺品整理や遺産相続に関することなども、エンディングノートに記載しておきます。残された家族や親族の方がわかりやすいように、お金、通帳、銀行印、保険証などの保管場所も記しておくとよいでしょう。

エンディングノートは自由に書けるので、自分史をまとめて残すこともできます。自分の人生を振り返り、今後の人生を考えるきっかけにもなりますので、終活ではエンディングノートを作成しましょう。

《終活でやること5》葬儀やお墓に関することを決める

終活をしていくと、葬儀やお墓について考えるようになります。葬儀は宗派ごとに異なり、お墓も種類があって生前予約が可能となっています。どのような葬儀、お墓、供養をしてほしいのかという希望は、エンディングノートに書いておきましょう。

日本の一般的な葬儀の流れは、「通夜、葬儀・告別式、火葬、遺骨安置、納骨・埋葬」となっています。頼れる親族がいる方は、自分の葬儀やお墓についての希望を生前から伝えておきましょう。

おひとり様で身寄りのない方は、葬儀や納骨といった死後の手続きを、生前に士業事務所などに依頼して代理(死後事務委任契約)してもらう方法がおすすめです。

お墓は、継承者の有無で選び方が変わります。お墓の継承者がいない方は、「永代供養墓、納骨堂、散骨、樹木葬、海洋葬」などの供養方法も選択肢としておすすめです。

一人で迎える終活の重要ポイント!おひとりさまの孤独死・対策

近年は、高齢者の「孤独死・孤立死」が社会問題となっています。

孤独死とは、一人暮らしの方が、病気や怪我などによって突発的に住居で亡くなることです。孤独死では、誰にも助けを求めることができず、誰にも看取られないまま亡くなり、遺体の発見が遅れてしまうケースもあります。

老後のおひとり様は、「孤独死のリスク」を減らすために対策することが必要です。万が一のときに備えて、終活とともに孤独死対策の用意も始めましょう。

孤独死を避けるための行動は、以下のとおりです。

【孤独死を避けるためにするべきこと】

1. 緊急連絡先を伝えておく
2. 緊急通報サービスを利用する
3. 周囲とコミュニケーションをとる
4. 一人暮らしであることを役所に伝える
5. 見守りサービスを利用する
6. 任意後見人制度を利用する

ここでは、孤独死を防ぐための各ポイントを解説します。

《終活!孤独死の対策方法1》緊急連絡先を伝えておく

万が一のときに備えて、「緊急連絡先」を友人や知人、大家さんなどに伝えておきましょう。緊急連絡先を伝える相手は、日頃から親交があって信頼できる方がおすすめです。

緊急連絡先としては「家族・親族、かかりつけの病院、介護施設、葬儀社、菩提寺」などが挙げられます。エンディングノートにも、ページの最初に「緊急連絡先」を記載しておきましょう。

《終活!孤独死の対策方法2》緊急通報サービスを利用する

「緊急通報サービス」とは、急病や怪我などによって緊急事態に陥ったとき、連絡体制を確保するサービスです。

緊急通報サービスでは、専用の小さなペンダントを身につけて、イザというときにそのペンダントを押すと、受信センターに通報されて、援護・サポートを受けられるという仕組みになっています。

利用可能な自治体では基本的に無料、外部の民間事業者では有料で、緊急通報サービスを提供しています。緊急通報サービスは、老後のおひとり様にとって、イザというときに役立つサービスなのでぜひ活用しましょう。

《終活!孤独死の対策方法3》周囲とコミュニケーションをとる

孤独死では、自宅で亡くなってから数ヶ月後に発見されたというケースも少なくありません。日頃から周囲の人々とコミュニケーションをとることで、こうした孤独死の悲劇を防ぐことができます。

ご近所さん、散歩中に会う人、通いの店の店員さんなどに、積極的に話しかけてみましょう。趣味のサークルや地域の集まりなどに参加して、身近な人々と交流を深めることもおすすめです。

身近に話せる相手を作っておくと、一人暮らしの悩みを相談したり、役立つ情報を共有したり、イザというときに助けてもらえたりするというメリットがあります。

特に、おひとり様で身寄りのない方は、孤独死のリスクを減らすためにも、積極的に周囲の人々とコミュニケーションをとるように心がけましょう。

《終活!孤独死の対策方法4》一人暮らしであることを役所に伝える

現在の日本は、少子高齢化が進んで「超高齢化社会」となっています。

65歳以上の高齢なおひとり様も増えており、自治体によっては一人暮らしの高齢者を対象にした「生活支援サービス」を提供しているところがあります。

生活支援サービスには「見守りサポート、介護サービス、生活支援、生きがいづくり」などがあり、自治体ごとに内容が異なります。

このような生活支援サービスを受けるためにも、高齢のおひとり様は、一人暮らしであることを役所の福祉課などに知らせておきましょう。

《終活!孤独死の対策方法5》見守りサービスを利用する

「見守りサービス」とは、一人暮らしの高齢者をサポートするサービスです。

見守りサービスには「訪問型、センサー型、オート電話・オートメール型、カメラ型、宅配型」などがあり、個人のライフスタイルにあったものを選ぶことができます。

見守りサービスの内容や料金は、自治体や民間事業者ごとに異なり、自治体では基本的に無料、民間事業者では有料となっています。

自治体の見守りサービスでは、職員やボランティアの人が積極的に自宅を訪問してくれたり、イザというときに役立つ「緊急通報サービス」を利用できたりするといったものがあります。

孤独死を防ぐためにも、老後のおひとり様は見守りサービスを活用しましょう。

《終活!孤独死の対策方法6》任意後見人制度を利用する

「任意後見人制度」とは、認知症などで自分の判断能力が低下したときに、財産管理や医療・介護サービスなどの事務手続き、各種手配を代行してもらう制度です。

任意後見人制度の後見人を誰にするかは、自分で決めることができます。

任意後見人制度の後見人を選任するときは、信頼できる相手を選びましょう。行政書士などの法律専門家に相談したり、依頼したりすることもおすすめです。

一人で迎える終活の「生前契約」!おひとりさまの老後・死後サポート

「生前契約」とは、生きている間に交わす契約のことです。

おひとり様の生前契約では、葬儀やお墓だけでなく、「身元引受契約」「任意後見契約」「死後事務委任契約」といった老後・死後サポートも大切になります。

高齢になると体が動かなくなったり、判断力が低下したりするなどして、老後の生活に不安を抱える方も少なくありません。老後や死後の不安を減らすためにも、おひとり様は生前契約を活用しましょう。

ここでは、「身元引受契約」「任意後見人制度」「死後事務委任契約」の生前契約について、わかりやすく解説します。

《終活サポート1》老人ホームの入居に役立つ「身元引受契約」

身元引受契約とは、「身元引受人(身元保証人)」になる契約のことです。有料老人ホームなどの高齢者住宅に入居する場合、一般的に「身元引受人」が必要になります。

身元引受人は、高齢者住宅に対して責任をともない、「金銭債務の保証、連絡対応、身柄の引き取り、遺体・遺留品の引き取り」などの義務を負います。

身元引受人は誰でもなれますが、知人や友人に依頼してトラブルにつながるケースもあります。おひとり様で身寄りのない方は、行政書士などの専門家に相談・依頼することをおすすめします。

《終活サポート2》判断力低下の生前に役立つ「任意後見契約」

任意後見契約とは、将来、認知症などで自分の判断能力が低下したときに、財産管理や医療・介護サービスなどの事務手続き、各種手配を代理してもらう契約のことです。

任意後見契約の後見人はあなたが選任できるので、自分が信頼する相手に老後をサポートしてもらえます。任意後見契約の後見人として、行政書士などの法律専門家に依頼することもおすすめです。

任意後見契約の契約期間は、自分が亡くなるまでになります。死後の事務手続きも代理してもらいたいときは、「死後事務委任契約」を利用しましょう。

《終活サポート3》身寄りのない死後に役立つ「死後事務委任契約」

死後事務委任契約とは、自分の死後に、葬儀や納骨、遺品整理などの事務手続きを代理してもらう契約のことです。

おひとり様で身寄りのない方は、死後の事務手続きをお願いできる人がいないため、生前から自分の死後について準備しておく必要があります。

死後事務には「親族・関係者への死亡連絡、葬儀・お墓に関する事務、医療費など生前に発生した費用の支払い事務、遺品の整理・処分に関する事務、相続財産の引継ぎ事務」などがあります。

生前に死後事務委任契約を交わしておくと、死後の心配がなく、安らかに老後や最期を迎えることができます。

身寄りがない、遠い親戚に負担をかけたくない・・・というおひとり様は、司法書士や行政書士などの法律専門家に死後事務委任契約を依頼しましょう。

一人で迎える終活は自分のために。おひとりさまの幸せな人生を

今回は、一人で迎える終活について解説しました。いかがでしたでしょうか?

終活には、特に決まったルールはありません。

遺品整理や財産整理、エンディングノートの作成だけでなく、終活に関する本を読んだり、終活旅行に出かけたりすることも終活の一環になります。終活の知識を深める、思い出の場所を訪れるといった活動は、今後の人生をより豊かにしてくれることでしょう。

一人で迎える終活は、あなたが最期まで幸せな人生をおくるための活動です。心安らかな老後・最期を迎えるためにも、できることから少しずつ終活を始めてみましょう。