みなさんは『家じまい』という言葉を聞いたことがありますか?
『家じまい』とは家を閉める事、老後の為生前から自宅を手放すことを指します。
近年では、核家族化が進み自宅を継ぐという事が減っており、子供達も独り立ちをして、各々の自宅を所有していることがほとんどです。
また、相続と聞くと『不動産や土地が無いから関係ない』と思われがちですが、自宅も立派な財産です。
生前のうちに家を手放すのか、故人の死後に家族が自宅を処分するのでは処分の方法も変わってきます。
終活に役立つ自宅の処分方法を一緒に確認しましょう。
生前に自宅を処分して老後に備える
家じまいにもいくつかの考え方があり、生前に家じまいをする、生前は何もせず、自身の死後に子供達や相続人に自宅の処分方法をお任せするという方法があります。
老後のための家じまいを考える理由としては、『相続する人がいない、相続で揉めごとを減らしたい、老後の資金としてまとまったお金が欲しい』という内容が多くを占めていますので、自宅の後継者がいないのであれば、家族の為にも、終活の中で家じまいをすることをお勧めします。
自宅を売却するには、家自体を売り物件にする方法と家を解体して土地にしてから売却する方法がありますが自宅の老朽化などでリフォームをしなければ売れない物件もありますし、自宅を解体するには解体の費用が掛かりますので、費用面から見ると一概に自宅の売却と土地として売却するのではどちらが得とは言えません。
まずは自宅の価値や土地の価値を確認するために、不動産会社に相談をし、相続のことが心配であれば司法書士とも絡めて一緒に相談するとなお良いでしょう。
また、『土地総合情報システム』という国土交通省のWebサイトで不動産の取引価格を調べることもできますので、不動産会社に行く前の予備知識として、自宅の相場価格を事前に見てみるのも良いでしょう。
自宅を売却するまでの流れとは?
自宅を売却するにはいくつかの手続きと、買い手が付くまでには長い時間がかかります。
現在進行形で済んでいる自宅を売却から引っ越しが完了するまでに、早くても3ケ月~6ケ月、長いと1年以上かかることもあり、自宅を売却すると決めたらすぐに引っ越しができるわけではありませんので、注意が必要です。
また、すでに新居に引っ越し済みの場合は空き家状態で売り物件にすることになるので、庭の手入れが行き届かないことや、住む人がいなくなった家は劣化のスピードが速くなるため、長期戦になればなるほど買い手が少なくなってきますので、売却までの流れと期間を頭に入れておくことで、終活の中で余裕をもって準備をすることができます。
それでは、自宅売却から引っ越しまでの流れを確認していきましょう。
◇現在住んでいる自宅を中古物件として売却する流れ
①価格査定:自宅の不動産価値を査定する(不動産会社のサイトで無料査定をする)
②仲介業者:査定額や接客面などトータルで比較し、仲介業者を決定する
③売 却:不動産会社にて売却の広告が出て、販売がスタートする
④内 見:広告を元に希望者が不動参会者と物件の内見にきます
⑤価格交渉:広告の価格よりも値下げ交渉はあるものだと思っている方が良い。
⑥売買契約と引き渡し
現在進行形で済んでいる住宅を売り物件として出す場合には、購入者に好印象を与える必要がありますので、ペットがいる場合は内見時は別の場所に預けましょう。
また、購入者によりフルリフォーム、リノベーションを検討している人もいれば、最低限の修繕で抑えたい人もいますので、大きな傷や目立った汚れがある場合は、事前に清掃し修繕しておくとより好印象を与えることができます。
自宅を解体して土地として売却する
自宅を処分する際に、中古物件として売却するのではなく、自宅を取り壊して更地にして土地として売却する場合には、自宅の解体費用がかかります。
建物自体を取り壊すだけでなく、更地にするのは庭の樹木や装飾品の撤去、池がある家は池を埋める作業などが必要になります。
◇自宅の解体費用の目安
木造建築で1坪20,000円~40,000円前後とされており、鉄筋コンクリートの場合は費用が10,000円~20,000円ほど上乗せされます。
また、解体作業をする環境(狭い道路で重機が入れない、山の上など)特殊な地形などによっては解体方法も変わるため、費用も変動しますし、庭の樹木の撤去などの付帯工事が発生すると、費用は追加されますので事前に解体業者数社の見積もりを取ると良いでしょう。
最近では古民家などのリノベーションも流行しているので、自宅が古いから即解体ではなく、解体業者と並行して不動参会社にも相談することをお勧めします。
空き家と土地の有効活用法とは?
生前に家じまいをした場合には、空き家になる物件や土地は有効活用することができます。
例えば更地にして土地として売却するのであれば、駐車場経営をしたり畑などの貸し土地にするなど、売却するだけではなく収入源として活用することができます。
特に利便性が良い土地などは駐車場経営や、テナントとしての利用希望も出る可能性がありますので、住宅として利用するための土地や住宅だけに囚われずに、住宅以外にどのような活用方法があるのか?
また、住宅以外にどのような建物だったら建設できるのかを事前に調べ、不動産会社に相談するのも良い方法です。
故人の死後に自宅を処分する方法とは?
故人の死後に住宅を処分するには①相続をして住宅を引き継ぐ。
②住宅を処分する。という2つの方法があります。
住宅を相続するのは両親の家つまり実家だけではありません。
生活状況や家族構成によっては親族関係の住宅のお世話をしなければいけない可能性もありますので、相続をする可能性がある場合は、住宅の所有者の死後はどのような流れで住宅を処分するのが最善なのかを一緒に確認しましょう。
住宅を引き継ぎ相続する場合
住宅の所有者の死後に住宅の処分をせずに相続をする場合は、不動産の名義変更である相続登記の手続きをすることと、相続税の支払いが発生します。
また、住宅を相続した場合は、その住宅に住んでいなくても固定資産税などの諸経費はかかりますので注意が必要です。
ですから、すでに自身の自宅がある、固定資産税の支払いが難しい、という理由から空き家になることが事前に分かっている場合は、早々に空き家対策をする必要があります。
空き家を放置することで発生する問題とは?
まず、空き家を放置しておくことで問題になるのは、犯罪に利用されてしまう事で、空き家を狙った空き家荒らし(空き巣)や空き家自体が犯罪者の巣になることもあります。
日常の生活で一番の問題になるのが庭の樹木などの剪定に関する問題、不法投棄などでゴミ屋敷化する可能性があるなど、ご近所の方に迷惑がかかることです。
特に景観を売りにしている住宅街の空き家は、住宅街の全体の景観を損ね、住宅街の価値を下げてしまう可能性がありますので、遠方に住んでいて相続した住宅のメンテナンスを定期的にできない方は、早々に空き家対策をしなければいけません。
さらに、空き家問題では国土交通省が指定する『特定空き家』に指定されるととても厄介なことになります。
特定空き家とは?特定空き家に指定されることで起こる問題
特定空き家とは、国土交通省が規定に従い撤去、解体が必要と判断する空き家を指します
◇特定空き家に指定される条件
①倒壊の恐れがあり、保安上危険となる恐れがある状態
②衛生上有害となる恐れがある状態
③管理が行われていないことで景観を損なっている状態
④周辺住民の生活環境保全を図るために空き家を放置することが不適切な状態
特定空き家に指定されると『調査~勧告~命令』の段階で行政指導が入り、空き家の持ち主が命令まで無視をし続けると、空き家は最終的に強制撤去されてしまいます。
もちろんこの強制撤去にかかった費用は、所有者に請求されますので、行政が解体してくれたから良かった。では済まされません。
また、特定空き家に指定され行政勧告に従わなかった場合は、通常の4倍~6倍の固定資産税がかかる可能性がありますので、実家に関わらず住宅の相続が発生した場合は、現在の自身の住宅事情と今後の諸費用などをしっかり計算したうえで、住宅の相続を検討するようにしましょう。
また、相続する側も空き家問題に発展しないように終活の中で、自宅の処分方法を検討し遺族や親族に迷惑が掛からないように準備をしておきましょう。
シングル者やおひとり様は相続する側、相続される側のどちらの立場でも、空き家問題に発展することが無いように親族と相談し、自宅の処分方法を終活ノートやエンディングノートに記載をしておきましょう。
家じまいをした後の新居を考えよう
家じまいを決定した後に必要なのは、老後に住む新居に引っ越すことです。
家じまいをするくらいですから、年齢は高齢に近いかと思いますので無理な引っ越しや、余生の長さに見合っていない住宅への引っ越しは、家じまいの失敗の原因になりますので、家じまい後の新居選びにはどのような方法があるのか一緒に確認しましょう。
家じまい後の住まいを選択するポイント
家じまいをして、新しい住宅を選ぶのにはいくつかのポイントがあります。
家族や老後の為に慣れ親しんだ自宅を手放したのに、新居選びで失敗はしたくないですよね?失敗しない新居選びのポイントの詳細を紹介します。
◇家じまい後の新居選びを失敗しないポイント
①余生に見合った価格の住宅を選ぶこと
これは言うまでもなく、身の丈に合った価格の住宅を選ぶという事です。
自宅の売却がスムーズに終わり、ある程度まとまったお金が手に入ると金銭感覚が少し鈍ることがあります。
あくまでも老後の資金として自宅を売却した方は、家賃と生活費、余生の長さのバランスを考えて新居を選びましょう。
②今まで住んでいた自宅と同等の広さを求めないこと
新居を選ぶ際にはどうしても元々の自宅と比較しがちになり、手狭と感じる事がありますが、子供たちが独立しているのであれば少々手狭に感じる程度が、新居としては十分な広さと言えますのでアパートやマンションも選択肢の1つと考えましょう。
③セカンドライフに田舎暮らしを選択すること
田舎暮らしにあこがれて、新居に田舎を選択する方も増えていますが、都心で生活をしていた方達には田舎暮らしは想像以上に体力を使いますし、不便な事もたくさんありますので、安易に憧れだけで田舎暮らしを選択するのはやめましょう。
④子供たちと暮らすこと
二世帯住宅を建てるなどして、子供に協力してもらいながら生活をしていく場合は田舎暮らしのポイントと同じで、田舎に住んでいる親が都心に移住する、またはその逆で都心に住んでいる親が田舎に移住することは、やはり環境の変化についていけず、失敗する可能性がありますので老後は子供に…。と決めつけることなく柔軟に新居を探しましょう。
⑤施設に入居すること
施設といっても老人ホームが全てではなく、リゾート型のマンション、コンシュルジュが常駐するマンション型の老後用マンションもあり、お世話をしてもらって生活するのではなく、医療面などを手伝ってもらいながら、独立した生活をすることができます。
5つのポイントを抑え、終活の中で失敗しない家じまいを家族と相談していきましょう。
新居探しで最大の注意ポイント!詐欺や悪徳業者に注意!
高齢者を狙って様々な詐欺が多発しており、住宅に関する悪徳業者や詐欺も少なくはありません。
特にリゾート型の老後施設や老後マンションなどの高級施設に入居を考えている方が狙われやすいのがポイントで、特徴的なのは『投資型の詐欺』です。
リゾート型マンションの建設投資をすることで、入居条件が良くなるキャッシュバックがあるなどと謳い、投資金だけを回収し逃げられるという詐欺です。
また、仲介業者を介さずに個人で自宅の住宅売却広告をオークションやフリマアプリ感覚でインターネットに投稿し、必要のない人までに個人情報をさらしてしまい、さらには売却した自宅が犯罪に利用されるという事もあります。
セカンドライフのスタートを詐欺などの悪徳業者に台無しにされないように、最新の注意を払い不安に思ったら必ず家族や友人に必ず相談をしましょう。
最新のシステム!空き家バンクとは?
最近の住宅事情として、自宅の後継者がいないという問題があり空き家が社会問題になっていというお話をしてきましたが、住宅を相続する側も自身の住宅事情や仕事の都合や家族の都合で、相続してもどうしても住宅を手放さなければいけない、想い出がたくさんある家を解体したくないという声もたくさんあります。
そこで、最近注目されているのが『空き家バンク』というシステムです。
この空き家バンクというシステムは自治体やNPO団体が運営しており、所有している空き家を登録することで空き家を借りたい、買いたいといった情報が共有されて、お互いの空き家に対する提供と利用の希望がマッチングすると契約成立というシステムになります。
空き家バンクの利用の流れとは?
実際に次の利用者に空き家が渡るまでは、必要書類や自治体の調査などが必要になりますが、条件をクリアできればすぐに空き家バンクに登録が完了します。
この空き家バンクは、Iターン、Uターン、Jターン(都会から地方へ、または地方から都会へ、都会や地方から中都市へ移住すること)にも活用されており、また、過疎化が進んでいる地域では農業や漁業の担い手を得るために、助成金などを出して田舎暮らしの素晴らしさをアピールするなどして空き家バンクを通じで移住者を募っていますので、スローライフを満喫したい若い世代や、子育て世代に注目されています。
各都道府県のアンテナショップなどでも移住に関する説明会や希望者への案内会などを積極的に開催しています。
また、空き家バンクは移住者の獲得利用だけではなく、公共施設や民泊やカフェなどリノベーションをして再利用されることもありますので、自分が所有する物件が長く利用されるというメリットもあります。
社会問題にも発展している空き家事情は決して他人事ではありませんし、終活や生前整理をしていく中で誰もがぶつかる問題ですが、残された空き家は処分や解体が全てではありません。
自分の家という感覚ではなくなってしまいますが、空き家バンクを活用することで家の形そのものが無くなってしまう寂しさも軽減しますし、空き家バンクで住宅を賃貸にすることで大きな収入はありませんが、空き家維持の諸経費の軽減ができますので、空き家にしておくよりは次の人に住宅を有意義に使ってもらう方がメリットは大きいと言えます。