位牌といえば仏教に必要な仏具であり、仏壇に安置するものというのが当たり前でしたが、近年では宗教観関係なく無宗教でも位牌を作成する方が増えています。

なぜならば、故人を偲び位牌という手を合わせる対象があると、心の喪失感を埋めることができるからです。

最近では位牌の種類もたくさんあり、価格も様々です。仏教として位牌を購入する際のポイントと、無宗教として位牌を購入するポイント、位牌の処分の方法など終活に必要な位牌の基礎を一緒に確認しましょう。

仏教で位牌を作成するタイミングとポイント

仏教で作成するタイミングは、葬儀が終わり次第すぐになります。
なぜならば、四十九日法要で位牌の開眼供養が必要になるからです。

開眼供養というのは、四十九日の旅を終えた故人の魂を、葬儀で使用した白木の仮の位牌から、本位牌(作成した位牌)へ移すことを指し、僧侶の読経が行われます。

浄土真宗系では、開眼供養ではなく御移徙(おわたまし)といい、慶事の法要をします。

葬儀社によっては、葬儀後すぐに位牌の作成手続きをしてくれる場合もありますし、菩提寺ですとお寺が位牌の作成まで手続きしてくれることもあります。

この開眼供養をするため、四十九日法要までに位牌が必要になるので必ず四十九日法要に遅れることが無いように、位牌は早めに手配をしましょう。

位牌の大きさを決めるポイントとは?

位牌にはサイズがたくさんあり、位牌の大きさは『1寸、2寸』と数えます。

一寸は3cmですので、通常平均的な位牌は4寸~5寸(12cm~15cm)で作成し、0.5寸単位でサイズがあります。
位牌の一寸はあくまでも戒名を書き入れる札の部分のサイズになりますので、土台の部分を入れるともう少し大きくなります。

大きさの目安としては大体4.5寸が500mlもペットポトルと同じくらいのサイズになりますが、土台の装飾によってはサイズが変わります。

地域性にもよりますが、先祖の位牌よりもサイズを大きくしないこと、男性の位牌よりも、女性の位牌は小さくすることなどのルールがある場合がありますので、お寺や親族に確認してから作成しましょう。

位牌の作成にかかる時間とは?

位牌を作成するのには平均的な日数として約2週間かかります。

この2週間というのはあくまでも平均的な目安になり、戒名をどの方法で位牌に書き込むか?位牌の種類はどれにするか?でも作成の時間は変わりますし、お店によってはもっと早い数日で完成することもあります。

位牌に戒名を書き込むには『手書き』『機械書き』『手彫り』『機械彫り』の4つの方法があり、手書きと手彫りは職人が手作業で位牌に戒名を入れていくので、通常よりも作成に時間がかかり、機械書きと機械彫りは平均の2週間で作成することができます。

また、位牌本体も通常の在庫があるものでしたら問題ありませんが、『呂色仕上げ』や『位牌の装飾』という、職人が手作業で作成する位牌は、オーダーメイドになることが多いので、通常よりも作成に時間がかかりますので、これらの時間も踏まえて余裕をもって位牌の作成依頼をしましょう。

位牌を作成するときの必須確認事項とは?

位牌を作成するにあたって、一番間違えてはいけないのは故人の戒名や俗名、生年月日、没日を間違えることです。

葬儀の際に僧侶が『戒名紙』といって、戒名を書いた短冊を仮の位牌に張るか、仮の位牌に筆で直接戒名を書き込むのですが、僧侶によっては達筆すぎて特に戒名が分かりにくいことがあります。

僧侶によっては、戒名を付けた由来などをパソコンで作成してくれる方もいますが、全員がそうではありませんので、分かりにくい字がある場合は僧侶に必ず確認を取るようにしましょう。

また、戒名には常用漢字ではない漢字や、異体字が使用されることがとても多いので、位牌の原稿を作成する場合は細心の注意をして確認をするようにしましょう。

位牌の種類と価格帯を知ろう

位牌には昔からのオーソドックスな形から、カラフルなものまでたくさんの種類があります。

仏教で位牌を作成する場合は、すでに仏壇にある先祖の位牌に合わせて作成することもありますが、必ず同じようなデザインにする必要はありません。

位牌は大きく分けて『塗位牌』『唐木位牌』『その他』の種類に分かれます。

『塗位牌』は黒く光沢がある、昔ながらのオーソドックスな位牌です。
『唐木位牌』は黒檀や紫檀など木目が綺麗な位牌です。
『その他』に分類されるのはクリスタルや竹などの木製以外で作られたモダン位牌で、木製でも唐木の位牌とは違い、モスグリーンやワインレッド、ナチュラルなどのたくさんの素材と色の位牌があります。

また、台座の部分も彫刻された台座もあれば、桜などの柄をペイントしたかわいらしい位牌もありますので、どの位牌がいいか予め家族にリクエストしておくのも良いでしょう。

位牌の価格の目安とは?

位牌の価格は、『位牌の素材』『戒名の入れ方』『位牌の大きさ』で変わり、もちろん同じ位牌でも大きさが大きければ価格は高くなります。

平均的なオーソドックスな塗4寸の位牌ですと10,000円~30,000円で購入でき、唐木の位牌は20,000円~30,000円、呂色仕上げは40,000~50,000円、モダン位牌になると10,000円~100,000円まで価格は幅広くなります。

さらに、戒名の書き入れがセットになっているお店もあれば、別料金のお店もあり、通常ですと5,000円~10,000円程で文字を入れることができますが文字の入れ方が、手書きなどの職人の作業が入るとさらに5,000円~10,000円の追加料金がかかることがあります。

位牌のサイズが大きければ価格も高くなりますが、価格を抑えようと無理に小さい位牌を作ってしまうと、戒名の長さによっては作成が難しく、また、バランスが悪くなってしまうので、価格だけにとらわれず総合的なバランスを見ながら仏具店と相談して位牌を作成するようにしましょう。

戒名の書き入れの方法でお勧はあるの?

位牌の作成で戒名を書き入れる方法として、職人が作業をする『手書きと手彫り』、機械が戒名を入れる『機械書きと機械彫り』がありますが、長く使用していく位牌としてお勧めするのは『彫り』で戒名を入れることです。

これは、職人の手彫りでも機械の機械彫りのどちらでも構いませんが、位牌は手入れをする際に柔らかい布で表面を拭くという作業をしますので手書きや機械書きの場合経年劣化で文字が薄くなることがありますが、その点、彫りで作成する位牌は戒名を彫った後に色を入れていくので、お手入れをしても文字が消えにくいという特徴があります。

また、手書きや機械書きで消えた文字をメンテナンスで修正するのは難しいですが、手彫りや機械彫りで薄くなった文字は彫った溝に色を入れるだけですので、メンテナンスをお願いするのも簡単という利点があります。

無宗教で作成する位牌の特徴とは?

無宗教で葬儀を終えた場合、位牌を作成してはいけないのではないか?
戒名が無ければ、位牌を作成することはできないのでは?
と思っている方もたくさんいるようですが、位牌は戒名が無くても生前のお名前である俗名で作成することができます。

近年では無宗教形式の葬儀が増えており、仏壇も位牌もお墓も持たないという方が増えていますが、忙しかった葬儀が終わった後に故人を亡くした喪失感に襲われる方がたくさんいます。

また、日本は仏教色が強いので、位牌や仏壇が無いと故人が浮かばれないのでは?と後から後悔してしまう方もいます。

そこで、心の拠り所として無宗教でも位牌を作成する方が増えているのです。
お経がなくても、毎日家族が手を合わせて供養することで、故人に気持ちを伝えることができ、残された家族も供養をしてあげられたという、心の喪失感を減らすことができます。

無宗教では位牌の作成は自由ですので、サイズも色も柄も好きなように選ぶことができます。

洋室に合うクリスタル製の位牌や、家具に合わせたモダン位牌などもありますし、四十九日の法要をしないのであれば作成に期限もありません。

無宗教だから位牌は必要ないと今は思っていても、葬儀が終わった数年後でも何か供養をしてあげたいと思ったときに、位牌を作成することができますので、無宗教でも位牌はいつでも作成できると覚えておくと良いでしょう。

オーソドックスな位牌以外の特徴とは?

オーソドックスな位牌の他に『繰り出し位牌』『過去帳』『夫婦位牌』という形の位牌があります。

『繰り出し位牌』とは、位牌本体が箱のような形をしており、10枚の木札が入っており、そこに戒名を書き入れ、先祖の戒名札と一緒に保管をします。
繰り出し位牌の本体は40,000円~50,000円程ですが、戒名を書く板を破損した場合は板を単品で購入する必要があり、価格は10枚で3,000円程です。
法要など故人の供養が必要になった時は、該当する故人の戒名札を一番前に持ってくることで、位牌の窓に故人の戒名が出でくる仕組みになっています。

『過去帳』とは、戒名(法名)をノートのような台帳に書き入れるものです。
過去帳を作成した時から先祖代々、過去帳に故人の戒名(法名)を書き残していきます。過去帳自体は3,000円程で購入でき、過去帳を置く台座は10,000円程で購入できます。

『夫婦位牌』とは、位牌の形状はオーソドックスな位牌と同じですが、戒名や俗名を夫婦2人分同じ位牌に書き入れる位牌を指します。

作成の方法は2通りあり、先に亡くなった方の戒名や俗名を片側に入れて、片側のスペースを空けておき、次に故人が亡くなった時に隣に戒名や俗名を入れて完成するものです。

もう1通りは、先に亡くなった方の位牌を作成し、後から亡くなった方の位牌を作成するタイミングで夫婦位牌に変更する方法です。

先に片側に戒名、俗名を入れてしまうと亡くなることを待っている気がして縁起が悪いと感じる方も多く、また、片側のスペースを空けておく方法の他に赤い文字で裏面の俗名を先に入れる方もいますが、最終的には金文字にするため赤字に金を上塗りすると微妙に夫婦で文字の色に違いが出てしまいます。

ですから、夫婦位牌を作成する場合は先に亡くなった方の位牌を一本で作成し、後から夫婦位牌に変更する方が多いのです。

位牌の後継者問題と位牌の処分について考える

位牌の作成においてもやはり課題になってくるのは後継者問題です。

作成する時点での後継者がいないという問題もありますし、今ある仏壇の先祖代々の位牌が納めきれずどうしたら良いのか?という問題もあります。

そこで、位牌を処分するにはどのような方法があるのか確認しましょう。

位牌をお焚き上げして位牌の処分をする

位牌を作成した時は開眼供養して故人の魂を位牌に宿すという手順を取りましたので、位牌の処分をする際は逆に故人の魂を抜く、または別の位牌に移して供養し、位牌そのものはお焚き上げをして燃やして供養をします。

お焚き上げの供養は、後継者問題の解決にも活用できますが、仏壇のスペースに先祖代々の位牌の納まりが付かなくなった、繰り出し位牌の板がいっぱいになってしまった、夫婦位牌に変更するので先にある位牌を処分したい。
などの場合に利用されることも多く、先祖の位牌を複数お焚き上げで供養して、先祖代々の位牌として位牌を一本にまとめることもできます。

位牌がなくなることで、戒名が分からなくなるのが嫌だと感じる場合は自分なり書き残しておく、過去帳を活用するという方法があります。

永代供養をお願いして位牌の処分をする

後継者がいなくなってしまい、位牌を処分していかなければいけないがまだ、自分が生きている間は位牌として残しておきたいという方にお勧めなのが、位牌の永代供養です。

位牌の永代供養はお焚き上げとは違い、位牌本体をお寺に預けて供養してもらう方法です。
永代といっても永久にということではないので、大体は33回忌を目安に供養され処分をされますが、シングル者やおひとり様など自身で供養をしていくことが難しい方にはお勧めです。

また、すでにお墓などでも永代供養を考えている方は、位牌のことも合わせて菩提寺や墓地・霊園に相談してみると良いでしょう。

お焚き上げでの供養も、永代供養もお布施を用意しなければいけませんので、事前に供養のお布施がいくら必要なのか確認をしましょう。

無宗教の位牌を処分する方法

無宗教の位牌には、仏教としての魂の移し入れをしていませんので、厳密に言えば、供養をするという考え方はありませんが、やはり毎日手を合わせていた位牌を単純に処分することは心苦しいと思います。

お焚き上げをすることが一番ですが、お寺との付き合いが無い場合はお焚き上げをお願いすることが難しい場合もあります。

お寺によっては、檀家でなくとも誰でも受け入れてくれる場合がありますがもし、近くにそういったお寺が無い場合は、郵送でも受け付けてくれるお寺はないか?

または、遺品供養などをするときに一緒に位牌も供養することができないか確認をすると良いでしょう。