2003年に個人情報保護法が制定されてから、個人情報とプライバシーの保護はとても厳しくなりました。
本人と特定できるものは氏名だけでも個人情報となり、役所や銀行なども本人でなければ手続きができず、家族の中にも個人という新しい形ができました。
たくさんの個人情報がある中で、家族でも簡単には開示してくれませんので個人情報は生前整理の中で整理をし、家族のために記録を残す必要があります。
見落としがちな個人情報の生前整理を一緒に確認しましょう。
目次
生前整理で必要な個人情報整理ß√の項目を確認しよう
故人の遺品の中で個人情報として取り扱われる物がいくつかありますが、個人情報は大きく分けると2種類あります。
それは『手元に実物がある情報』と『携帯やパソコンなどのデータ』です。
実際にどのような個人情報があるのか確認していきましょう。
●健康保険証
●パスポート
●クレジットカード
●銀行通帳、キャッシュカード
●郵便物
●請求書、見積書
●印鑑、印鑑登録証明書、印鑑登録カード
●マイナンバーカードと通知書
●年金手帳
●保険の証書
●アドレス帳や手帳
●写真や動画
●SNSやオンラインゲームのアカウント
●通販の購入履歴
●インターネットサイトの閲覧履歴
●オンラインバンクやオンライン証券
●オンライン会員と会員ポイント
●知的財産(論文、創作物、ホームページなど)
人によってはもっと多くの個人情報を所有しており、特にデータとして残る個人情報は登録した本人も忘れているようなデータや、有料会員サイトが存在する場合があります。
まずは、どの個人情報を所有しているのか書き出すことから始めましょう。
他人事ではない個人情報漏洩の怖さを知ろう
もし、自身が他界してしまったら家族は故人の個人情報を全て正しく抹消することは可能でしょうか?
健康保険証など返却する義務があるものさえ処理してしまえば、あとはほったらかしでも大丈夫と思っていませんか?
答えは『家族が個人情報を全て抹消することは不可能』です。
個人情報を正しく整理する事には、情報漏洩を防ぐための大切な役割があります。
個人情報遺品は、亡くなった故人が抱えている情報によって、故人本人だけではなく家族や友人、会社など様々なところに悪影響を及ぼします。
個人情報遺品の情報漏洩が及ぼす悪影響とは?
個人情報遺品が万が一漏洩した場合に想定される悪影響は、第一に悪徳商法や詐欺の被害です。
今は氏名、住所、電話番号などの簡単なプロフィールでさえもお金になる時代です。
たった1人から漏洩した個人情報から数十、数百の他人の個人情報を拾うことができてしまいます。
家族や周囲の関係者の為にも個人情報遺品は生前整理の中で必ず整理と処理をするようにしましょう。
生前整理で実行する、公的な個人情報の処理方法
個人情報の中でも悪用されやすいのが公的な個人情報になります。
公的な個人情報は、価値が高い分類になりますので、悪用されないためには、公的な個人情報は正しい手順の元に各機関に返還することが一番確実です。
●運転免許証:警察署
●パスポート:都道府県のパスポートセンター
●マイナンバーカード、印鑑登録証明書、介護保険証、障碍者手帳など市区町村の窓口
公的な個人情報は他人の手に渡ってしまうと、本人確認の書類として使用できるので悪用性が非常に高く、お金を勝手に借りられるなどの実被害もあります。
また、どのような公的な個人情報を持っていたかという事の漏洩防止の為に公的な個人情報に付随するお知らせの手紙や書類もシュレッダーにかけるなどして処分をすることを忘れずにしましょう。
今のうちから返還できる公的な個人情報は生前整理で早めに処理をし、処理の目途がまだ立たない公的な個人情報は、どこに何があるかをエンディングノートや終活ノートに記録しておきましょう。
クレジットカードなど生活に密接した個人情報の整理とは?
公的な個人情報の他にも悪用されると困るのが、お金に関する個人情報です。
特にクレジットカードはお金の動きがその場で見えないだけで、カードを持っていれば誰でも使用することができるので悪用性が非常に高いです。
生前整理の中でクレジットカードを何種類持っているのか再度確認してもし、使用していないクレジットカードがある場合は、各クレジットカードのサポートセンターに解約の手続きをしましょう。
すぐに解約ができない使用中のクレジットカードに関しては、不正使用や年会費の請求を止める為にも使用しなくなったらすぐに解約する必要がありますので、家族に分かるように記録し残されたカードは、ハサミで細かく裁断して処分しましょう。
生前整理でまとめておくべき銀行口座の管理とは?
家族間の中で最も不透明なのが、お金に関する個人情報です。
銀行口座がいくつあるのか、どこの銀行にお金を預けてあるのか分からない状況ですと、家族が非常に大変な思いをします。
なぜなら、銀行口座は亡くなった情報が入った時点で口座が凍結されてしまうので、お金を出すことができなくなるのです。
基本的には家族の申告により死亡の情報が確認されますが、稀に新聞の訃報や自治体の訃報通知などで口座の凍結がされることがあります。
銀行口座が凍結しても、葬儀代だけは請求書を元にお金を引き出すことも出来ますが、銀行凍結後は基本的に家族であってもお金を動かすことはできません。なぜなら預貯金は故人の遺産になるので、金融機関は遺産相続のトラブルを回避するためにも、口座を凍結させてしますのです。
ですから、必要なお金は先に引き出して家族に預けておくこと、忘れて放置している口座がないか再度確認し、複数の口座を持っている場合は生前整理の中で予め、少数の口座にお金をまとめることをお勧めします。
また、年間で110万円を超えなければ生活費として家族や子供の口座にお金を移すことも1つの方法です。
年間で110万円を超えてしまうと贈与税がかかってしまうので、あくまでも生活費として使用する場合には問題ありません。
しかし、生活費として非課税にしたものを投資などの生活費以外に使用すると追徴課税される可能性があるので注意が必要です。
相続税の有効期間は原則6年ですので、6年は領収書や証明書類を保管しておくと良いでしょう。
銀行の口座が凍結されたらどうすればいい?!
銀行口座の凍結解除の手続きは、銀行によって異なる場合がありますが、いくつか必要になる書類をご紹介します。
●相続手続きの依頼書 (銀行の書式で相続人全員の署名と捺印が必要)
●故人と相続人全員の戸籍謄本
●相続人全員の印鑑証明書
●遺言書、遺産分割協議書
●銀行へ手続きに行く人の身分証明書(運転免許証など)
銀行凍結にはたくさんの書類が必要になり、口座が多ければ多いほど手続きの回数は多くなりますので、口座を少数にまとめることをお勧めしています。
また、相続人が多いとそれだけ書類を揃える量が増えるので時間もかかりますので、その時は法務局で法定相続情報証明制度を利用すると、法定相続情報一覧図を作成してくれますのでとても便利です。
相続人の戸籍謄本が必要になりますが、一度作成しておけば写しも無料で交付をしてもらえますし、不動産の相続登記などにも使用できますので、便利な情報として覚えておきましょう。
データとして残るデジタル遺品の落とし穴とは
携帯やスマートフォンは1人1台必ず持つ時代になり、パソコンも当たり前の様に自宅や会社で使えるようになりました。
便利になった反面、故人が残した携帯やスマートフォンのデータやインターネットを利用したサービスがデジタル遺品として残り、家族を困らせてしまうケースが増えています。
確実に言えることは、残された家族が苦労しないためにも、全ての情報に関するIDやパスワードはエンディングノートや終活ノートに記録しておき、故人の死後に家族がいつでもデジタル遺産の整理の手続きができるようにしておかなければなりません。
しかし、そこで問題になるのが見られたくない情報と、見たくない情報が残っている可能性があるという事です。
家族に負担をかける事、後々に嫌な思いをさせないためにもデジタル遺品の整理は、自身でできるだけ生前整理を進めておきましょう。
デジタル遺品は大分類に分けると5つの項目に分けることができます。
1.写真や動画などのデータ
2.住所録や電話番号、メールアドレスなどの個人情報
3.インターネットバンキングや電子マネーなどのオンラインマネー
4.SNSのアカウントやホームページ、ブログなど
5.有料会員サイトのアカウントと利用情報
一見するとお金に関するインターネットバンキングやオンライン証券だけが重要に感じますが、そのほかの細かいデジタル遺品の整理もとても重要になります。
どのような点に注意してデジタル遺品を整理していくのが故人にとって、家族にとってもベストなのかを一緒に確認していきましょう。
生前整理で守るデータと消去するデータを選別しよう
家族とはいえ、知られたくない趣味や見られたくない写真や動画などもあると思いますし、あるいは創作物や論文など価値のあるデータは守らなければいけません。
また、仕事関係で見られてはまずい情報などもあるかもしれませんのでパソコンや携帯のデータはいつ見られても良い状態にデータの選別と整理をしておきましょう。
万が一の時に備えて、デジタル遺言としてパソコン上に遺言が表れてその遺言を開くと、自動的にデータが削除されるソフトもありますので状況に応じて利用すると良いでしょう。
住所録や電話番号、メールアドレスなどの個人情報を整理する
友人や知人などの周囲の人間関係を整理することも、生前整理ではとても重要になります。
既に他界している友人や、しばらく連絡を取っていない知人などは思い切って、データの削除をしましょう。
なぜなら、個人情報を残されれば、残されるほど家族は本当に必要な連絡先が分からず混乱してしまうからです。
家族の負担と情報漏洩の観点からも、個人情報の所有は最小限に留めるようにしましょう。
SNSのアカウントやホームページ、ブログの整理をする
TwitterやFacebook、インスタグラムなど様々なソーシャルネットワーキングサービスがありますが。複数のSNSを利用しているかたもたくさんいらっしゃると思います。
Twitterはプライバシーフォームにアカウントの所有者が亡くなった場合のアカウント削除の方法が掲載されています。
Facebookは追悼アカウントの申請が可能ですので、Facebookで繋がっている友人には追悼画面を通して故人の逝去を知らせることができます。
インスタグラムは追悼アカウントに変更することで、アカウントの削除またはアカウントの凍結を選択することができます。
ブログやホームページは自身で削除するしかありませんので、生前整理の中で閉鎖や削除をし、家族に全てを委ねる場合は、IDやパスワードをエンディングノートや終活ノートに記載をしておきましょう。
電子口座や電子マネーなどのオンラインマネーについて
オンラインマネーは特に故人にしか分からない情報です。
どこに口座があるのか?インターネット上に所有しているのは銀行だけなのか?FXや株は所有しているのか?など様々な要素が考えられます。
最近では、電子マネーの存在も大きくなってきておりチャージしたまま残高が残っている電子マネーやポイントが放置されるケースが増えていますので、所有している電子マネーの残高も確認しましょう。
また、株やFXに関しては負の遺産になる可能性もありますので生前のうちに一旦整理をして、株やFXをどのようにしていくか家族に伝える必要があります。
負債額が大きい場合は遺産放棄も検討する必要がありますので、早いうちに自身で処理を進めていくことをお勧めします。
自動引き落としの有料会員サイトに要注意
インターネットには様々なサービスがあり、有料会員のサイトもたくさん存在します。
基本的には一度有料会員になると、自動的に支払いの処理が行われますので注意が必要です。
故人が支払者の場合はクレジットカードや銀行が止まった時点で引き落としも止まりますが、携帯代と連携した引き落としなどは支払者が故人でない限り永遠に会員費を支払うことになりますので、有料会員サービスも必要のないサイトは早めに退会をするようにしましょう。
お互いに知るべきではなかった情報を見て後悔しないために
パソコンや携帯、スマートフォンの中には家族でも知られてはいけない、知るべきではない情報が含まれている可能性があります。
細かいところまでいえば、パソコンの検索履歴でさえ個人情報の塊です。
デジタル遺品を全て整理するためには、自身の死後は家族に手伝ってもらうしかありませんので、パソコンや、携帯、スマートフォンに関するパスワードやIDを家族に知らせなければいけません。
いざパソコンを開いたときに見てはいけない、知りたくなかった情報が出てきてしまったら家族はどう思うでしょうか・・・。
『立つ鳥跡を濁さず』です。不要な情報は責任をもって処分をしましょう。
デジタル遺品の処分方法に不安がある方は、デジタル遺品整理の業者に依頼をするのも有効な方法です。
デジタル遺品整理業者は個人情報の漏洩防止はもちろんのこと、希望に合わせて削除するデータと保管するデータの選別をしてくれ、家族に知られたくない情報は知られることなく処分することができます。
また、おひとり様やシングル者の方もデジタル機器への不安や、死後の情報漏洩に不安がある方はデジタル遺品整理業者の利用をお勧めします。