仏壇を購入すると通常はセットで仏具が付いてくるのが基本ですが、宗教を信仰していくうえで必要な仏具はそれだけではありません。
宗派によって必要な仏具もありますし、仏教ではない神道や新興宗教でも必要になる仏具や神具は様々です。
また、お彼岸やお盆、法要などで年に何回かしか使用しないような仏具もあります。
仏具とはどういった種類があるのか?どの様な時に必要になるのか?
購入のポイントも踏まえながら一緒に確認しましょう。

仏具の基本セットを揃えよう

仏教の仏具には様々な種類があり、毎日のお供えや供養には仏具一式が必要になります。

仏具にはどのような種類と役割があるのか、基本を確認していきましょう。

◇基本仏具の名称と役割

  • 花立  → 花瓶
  • 火立  → ろうそく立て
  • 香炉  → お線香をお供えする器
  • 線香立 → お線香を収納する器
  • お鈴  → お参りで鳴らす鈴(鈴台、座布団、棒のセット)
  • 仏飯器 → ご飯をお供えするための器
  • 茶湯器 → お水をお供えする器
  • 本尊  → お祀りする仏様の掛け軸や仏像(宗派により変わる)

仏具は基本の8点セットがあれば、仏壇として十分に機能することができますが本格的に仏教を信仰していく方は、僧侶が使用する木魚と大きなお鈴も必要になります。

浄土真宗系の以外の宗派は、ご飯の盛り方もお供えの作法も特別な決まりごとはありません。

価格は素材やデザインによって様々ですが、シンプルな仏具セットは20,000円~程で購入することができますが、やはり仏壇と同じくデザインや材質によっては数十万円する仏具セットもありますので価格と品質と常用性のバランスを見極めることが大切です。

自由にデザインを選べない宗派もありますが、仏具には様々な種類や色柄がありますので、好みに合った仏具を選ぶことで毎日の供養やお手入れも気持ちよくできると思います。

浄土真宗系の仏具選びの注意点

浄土真宗系の宗派は、その他の仏教宗派と違って『即身成仏』という考え方を持っており、仏教の宗派の中でも用意する仏具や仏壇、様々な仏事用語が他の仏教宗派と異なることがあります。
※即身成仏とは、四十九の旅をすることなく即仏様になれるという意味です。

仏具でいうと仏飯器は仏器といい、仏器の数や置き場所、ご飯の盛り方も異なり、浄土真宗系では仏器は3つ置くのが基本です。

他の宗派は仏具の色やデザインを比較的自由に選ぶことができますが、仏具の色も浄土真宗本願寺派と大谷派では用意する仏器が変わります。

この様に浄土真宗系は、同じ浄土真宗の中でも宗派により用意する仏具やルールが異なりますので、不安がある場合は必ず仏具店やお寺に確認をしてから仏具を用意するようにしましょう。

お供え物に決まりごとはあるの?毎日ご飯は必要?

とても厳しいお寺とのお付き合いをしているなど、特にお寺からの指示が無ければお供え物の種類に決まりごとはありません。

仏教を信仰しているのであれば、宗派の教えに乗っ取り仏飯器や茶飯器に毎日ご飯とお水をお供えしてください。

仏飯器にご飯を盛ってお供えした後は、故人様へのお供えが終わった後にご飯を食べるようになるので、一般的には朝にご飯をお供えする方が多いです。

しかし時代背景としてパン食が増えていることもあり、朝にご飯を炊かない家庭も増えていますので、毎朝の手間が無いように疑似ご飯も仏具として販売されています。

僧侶が来るときなどは手本通りにお供えして、普段は故人の好きだった物をお供えするなどし、各家庭の食事情に合わせてお供え物を準備しても問題はありません。

基本のお供えがしっかりしていれば、故人が好きだったお菓子や他の食べ物や飲み物をお供えしても問題はありませんが、お供えした後は処分するのではなく、『食べ供養』をしてください。

『食べ供養は』お下がりとも言われ、物を粗末にせずに故人と同じものを食べて供養をすることを意味します。
どうしても食べることができない状態でしたら、謝罪と供養の気持ちを持って処分することが本来の供養の仕方です。

形に囚われすぎず、故人や先祖の為に供養をしてあげる気持ちが一番大切なのです。

お彼岸やお盆、法要などで必要な仏具や道具とは?

毎日の供養の他にお彼岸やお盆、法要などで必要になる仏具や道具がります。

どのような仏具や道具が必要なのか、お彼岸やお盆、法要での飾りはどのようにするのかを確認しましょう。

お彼岸に必要なお供え物

お彼岸は年に2回、春と秋にあります。
お彼岸は春の春分の日、秋の秋分の日を中心とした7日間を指します。
特に特別な仏具や道具は必要ありませんが、お墓参りの準備をしましょう。

彼岸入り3日間→春分(秋分)の日→彼岸明け3日間で構成されており、春分(秋分)の日は毎年同じではないので、お彼岸の日程も毎年同じではありません。

お彼岸ではお墓参りに行き、仏壇にお供え物をするのが一般的で、仏壇にはお花を飾り、春分の日には牡丹餅を秋分の日にはお萩をお供えします。

地域によっては牡丹餅とお萩の認識や習慣が違うので、地域に合ったお供えをしましょう。

お盆に必要な仏具とお供え物

お盆は地域によって異なり7月盆と8月盆があります。
お盆の入りは13日、お盆の明けは16日とされていて、7月、8月とも共通です。

お盆を初めて迎える事を新盆(にいぼん)または初盆(ういぼん)といいます。

お盆は故人が家に帰ってくる大切な日になりますので、まずは仏壇を綺麗に掃除して、先祖を迎え入れる準備をしましょう。

お盆は特に親戚が集まってお線香をお供えするので、特に香炉は割りばしでかき混ぜて、線香の残りをきちんと取り除き、線香をお供えしやすいように、新しい灰を入れて香炉の中の灰をフカフカにしておきましょう。

お盆に用意する仏具や道具

  • 精霊馬(きゅうりの馬となすの牛)
  • 灯篭(明かり物)
  • 仏花
  • お盆膳(先祖のための食事。お菓子や果物も用意する)
  • 迎え火、送り火のおがら、ほうろく
  • 提灯(家の目印)
  • お布施(自宅に僧侶が来る場合と、お寺で合同法要をする場合がある)

お盆の時期になると必要な仏具はホームセンターやスーパーでも販売されるので、購入するのにはさほど苦労はしません。

灯篭も一度購入すれば何年かは使用でき、10,000円程~購入することができますし、お盆セットも販売しているので一回の買い物で必要な仏具と道具を揃えることができます。

仏壇が無い家は葬儀の後に使用した後祭壇をそのまま使用して仏壇の代わりにお供えや飾りつけをします。

もし、後祭壇を処分してしまった場合は仏具店で盆棚のセットが販売されているので安心してください。
盆棚の価格はフルセットで30,000円~程です。

仏具店によっては盆棚のセッティングをお手伝いしてくれるサービスを実施している店舗もありますので、シングル者やおひとり様でも無理なくお盆の準備を進めることができます。

浄土真宗系はお盆や新盆に特別何かをすることはなく、浄土真宗系の様に宗派によってはお盆の準備が必要無い場合もあります。

また、お盆は地域色が濃い行事で、同じ市区町村内でもお盆の習慣は様々ですので、特に新盆を迎える方は事前に必要な仏具を確認しておきましょう。

回忌法要に必要な準備と仏具とは

一周忌は命日から1年後、三回忌は命日から2年後になる
四十九日から始まり、一周忌、三回忌、七回忌と続く法要は五十回忌までが目安とされていますが、最近では三十三回で年忌法要の追善供養を終える家庭が増えています。

まずは最初の法要である、四十九日法要に必要な準備と仏具を確認しましょう。

四十九日法要に必要な準備と仏具

  • 仮位牌(葬儀で使用した白い木の位牌)
  • 位牌(四十九日までに必ず作成しておくこと)
  • 数珠
  • 遺影写真
  • 遺骨

四十九日法要を行う目的は、位牌や仏壇、お墓の『開眼供養』をすることです。

開眼供養とは葬儀で使用した白い木の位牌に入った故人の魂を、作成した位牌に移し替えることで初めて礼拝の対象となります。
仏壇とお墓も同じように開眼供養が必要です。

この開眼供養をしなければ仏教の世界では、位牌や仏壇、お墓はただのモノにしかすぎませんので、必ず開眼供養をするために四十九日法要の時に位牌が必要になるのです。

数珠に関しては、葬儀の時に用意しておくのがベストですが、突然のことで数珠を急遽用意できないこともあります。

しかし、四十九日法要までには十分に時間がありますので、仏教を信仰するのであればマナーとして数珠は必ず1つは持つようにしましょう。

また、数珠は宗派によって意味合いが変わるため、数珠の形に指定があることがありますので、事前に確認をしましょう。

神道の仏壇、祖霊舎に必要な神具とは?

神社で神様をお祀りしている神道では、仏壇ではなく祖霊舎(それいしゃ)を用意します。

仏教では、故人は仏の道に入り極楽浄土へ旅立つと考えられていますが神道では、故人は神として家を守る役目を持っているとされています。

神道で必要な神具一式

  • 神鏡
  • 神榊(左右一対で飾る旗)
  • 霊璽(仏教でいう位牌のような存在)
  • 三宝(果物や野菜、鮮魚をお供えするための台)
  • 白皿、徳利、水玉(お米と塩、お酒、水)をお供えする道具
  • 榊立て(榊を飾る花瓶。毎月1日と15日に榊を新品に交換する)

祖霊舎は日常では、故人が神として祀られている場所は扉を閉めています。
鏡は神の依代(よりどころ)として、鏡に依り付くとされていますので神具の中でも神鏡は一番重要ですので必ず用意をしてください。

霊璽(れいじ)は仏教でいう位牌を指します。形はいくつかありますが故人の名前が書かれた板を箱型の霊璽に収納してお祀りします。

仏教でいう所の四十九日法要は、神道では五十日祭と言います。
四十九日までに位牌が必要なのと同じように、五十日祭で霊璽が必要となります。

神道は仏教よりも比較的用意するものが少なく、簡略できる神具もありますので必要な神具が分からない場合は、神主や神具店に事前に確認をしましょう。

仏教、神道以外の宗教の仏具とは?

日本では仏教と神道以外にもたくさんの宗教があります。

新興宗教と言われている宗教の中でも、仏教から派生した宗教もあれば、神道から派生した宗教もありますし、全く新しい信仰の形を持っている宗教もあります。

信仰の考えが違えば、用意する仏壇や仏具も全く変わってきますので信仰に必要な仏具の取り扱いがある店舗を事前に確認しましょう。

後継者問題と仏具の必要性を考えよう

終活の中では必ずどの項目にも出てくる後継者問題ですが、仏具の取り揃えや仏具の必要性そのものに悩む人が増えています。

シングル者やおひとり様、無宗教で供養をしている人もそうですがその後の後継者がいない状態で、仏具を一式揃える必要があるのか?
という問題にぶつかります。

答えは、仏具の全てを揃える必要はありません。

本格的に宗教を信仰していない限りは、自身が供養をしやすいように準備をするのが一番であり、お線香をあげたい人は香炉とろうそく立てだけ、お参りにお鈴が欲しい方はお鈴だけでも十分に供養になります。

ですが、注意するべきポイントはお墓や親族の宗教観を必ず確認することです。
先祖や親、兄弟姉妹、親戚が代々守ってきたことを、自身の代で無くしてしまう可能性があることを十分に理解し、周囲の関係者に理解を得たうえで自分らしい供養の形を探してください。

意外と多いお悩み相談。習慣と信仰の違いに困惑!

初めて故人を迎える際に混乱することが多いのが、宗教の教えと地域の習慣のバランスです。

特に引っ越しで古くからある地域に入った方は地元ルールに困惑します。

初めて仏壇仏具を揃え、お盆を経験する方はインターネットや本などで調べようとする、親族にルールを確認するなどして初めての仏事に対して事前準備をすると思います。

そこで陥ってしまうのが、同じ宗教宗派でも地域により若干の違いがあることにより、用意する飾りや仏具が違うなど自身が持っている情報と事実にズレが生じてしまうのです。

特に法要やお盆は地域色が濃く出ることが多く、地域によってはご近所の方がお盆にお参りに来ることもありますので用意された仏具や飾り方によっては『あら?』と思われてしまうこともあります。

出生場所と違う地域で生活している方はインターネットや本の情報のみではなく、ご近所の方のお話を聞いてみるのもポイントです。