いつか突然やってくる葬儀という事態に、皆さんは何か準備をしているでしょうか?
今まで参列した葬儀の中で学んできたことや、マナーとして身についている知識はある程度はあると思います。
ですが、いざ喪主になったらどうでしょうか?
葬儀と一括りにしても宗教別、宗教の中でも宗派別に準備する物やマナーは様々です。
いざ葬儀という時に焦らないよう、事前にどの様な準備が必要になるのか喪主、遺族側の視点と参列者の視点になって一緒に確認しましょう。
宗教、宗派関係なく必ずしなければいけないこと
宗教や宗派は関係なく必ずしなければいけないことは、宗教者に訃報の連絡を一番にすることです。
宗教者とは、仏教は僧侶、神道は神主、キリスト教は神父、牧師にあたり、葬儀の日程を決定するには宗教者のスケジュールが空いていないといけません。
初めての葬儀で檀家などにも入っておらず、お寺や宗派にも特にこだわりが無ければ、葬儀社が宗教者を紹介してくれますので葬儀社にお任せするとスムーズに日程が決定します。
仏教での葬儀、宗派別に必要な準備
日本では主に13宗派の仏教が信仰されており、細かく分けると50以上もの宗派が存在しますが、信仰の大きな違いがあるのは浄土真宗系が主になりますので、浄土真宗系とそれ以外の宗派で葬儀の形とマナーを確認しましょう。
● 故人の愛用品
● 供物や飾り物
● 故人が使っていたお茶碗、箸、お皿、湯飲みとグラス(浄土真宗系では不要)
● ご飯とお団子(浄土真宗系では不要)
祭壇に飾る供花や供物、灯籠類は遺族・親族分は喪主が取りまとめて事前に葬儀社に依頼をすることになります。
御布施、御車料、御膳料を用意する
お布施の金額はお寺によって変わりますので、一番早いのは住職にお布施の金額をはっきりと聞くことです。
御布施には戒名代も含まれます。表書きは『御布施』で問題ありません。
御車料とお膳料は白い無地の封筒を用意し、御車料は表書きに『御車料』として5,000円~10,000円を用意しますが、遺族で宗教者を送り迎えするときには御車料は不要です。
御膳料は通夜振る舞いの食事に住職が参加できない場合に渡します。
表書きは同じく白い無地の封筒に『御膳料』と書きましょう。
御膳料の金額は5000円が相場です。
お車代とお膳料は遺族側の気持ちとして用意をしますが戒名を含むお布施の金額をお寺に聞くことは失礼に当たりませんので、安心してください。
しかし、住職によっては『お気持ちで』という方もいますので、不安な場合は親戚に確認をするか、お寺の総代(檀家の責任者)に相談してみましょう。
故人の愛用品を用意する
故人の愛用品や思い出の写真は、参列者の方々に見てもらうことも出来ますし、棺に入れて持たせることも出来ます。
棺に入れることができるのは、基本的に燃えるものになりますので書物やお手紙、ぬいぐるみや写真、たばこにはマッチを添えて、お酒は紙コップに少量注ぎ、おつまみを添えて入れる方が多いです。
また、故人が生前来ていた洋服などは湯灌の際に着せることができ、白装束の上から飾ることも出来るので1着セットで準備をしましょう。
愛用品に関しては宗教、宗派関係なく用意をするようにしましょう。
お供物や飾り物を用意する
祭壇は基本的に左右対称で作られているので、祭壇の上に飾るお供物も左右の台にそれぞれ左右対称になるように飾ります。
丸くて色の濃い果物と、色の薄い果物を飾りますので、グレープフルーツとりんごを各4個ずつの組み合わせが多い印象ですが、もちろん他の果物でも問題はありません。
ですが、お供物は左右対称に飾るので必ず同じものを同じ数だけ用意してください。
祭壇には組み込むことはできませんが、故人が好きだった食べ物やお菓子なども飾ることはできますので、ぜひ用意をしてあげてください。
故人のお茶碗と箸、お皿、湯飲みとご飯団子の準備
故人を祭壇前に安置する際に、四十九日の旅の為に必要なご飯と団子を用意します。
ご飯はお茶碗に山のように高く盛り付け、箸を真ん中に突き立てます。
湯飲みとグラスまたはコップにお茶と水を入れてお供えをし、お団子はお皿に積み上げるようにのせます。
お団子の数は6個と言われることが多いですが、地域によって10個や16個、49個という事もありますので、あまり数にはこだわらなくても大丈夫です。
お団子の作り方(6個分)
●熱 湯 約80ml
●茹で水 団子が完全に浸るくらいたっぷり
●冷水 ボウル一杯
1)上新粉をボウルに入れ、熱湯をゆっくり注ぎ、菜箸で粉っぽさが無くなるまでよく混ぜます。
(水分と粉を調整しながら「耳たぶより少し固め」なるようにしましょう)
2)6等分して丸めます
3)鍋に水を入れ火にかけ、沸騰したら団子を入れ3~4分間茹でます
4)浮き上がってきたら、一度冷水に入れてからお皿に取り冷まします
5)盛り付けは、5個を梅の花のように並べ、最後に1個を中央上にのせます
浄土真宗系で準備するもの
浄土真宗系の宗派は『即身成仏』という考えがあり、故人は四十九日の旅をすることなく、すぐに仏の道に行けるとされています。
ですから、浄土真宗系では四十九日の旅支度もしませんので故人には好きな服を着せることができますし、ご飯団子の用意も不要です。
故人は亡くなってからすぐに仏の道に行くのでお供え物にかけ紙をする際やお香典の表書きは、『御仏前』になるので注意をしましょう。
主に浄土真宗には本願寺派と大谷派がありますが、地域によっても少しルールが違うこともあるので、必要事項はしっかりと親戚や住職に確認をしましょう。
神道の葬儀で必要な準備とマナー
神道でのお葬式は、仏教の仏式と違いたくさんのお供え物を準備します。
仏教ではお布施などにあたるものなどの名称も全て変わります。
お供えは用意する物が多く、事前に購入する品がほとんどなので購入漏れがない様、事前に確認しましょう。
また、御祭祀料は金額を指定されることが多く、お布施よりも金額が低いことも多いですので、もし金額の指定が無ければ神職に聞きましょう。
神道の葬儀に必要なお供え物、神饌物(しんせんぶつ)とは?
- 魚 (鯛が主流)
- 野菜 (根菜と葉物。大根、ニンジン、ほうれん草など)
- 乾物 (スルメや昆布)
- 果物 (特に指定はなくバランスよく飾れればOK)
- 生卵 (10個)
- 洗米 (洗って乾かしたお米)
- 餅 (鏡餅のような形でも角餅でも形は問いません)
- 菓子 (故人が好きだったものでOK)
- 日本酒、水、塩
神饌物の魚は麻ヒモで縛り、野菜と乾物はそれぞれ麻ヒモでまとめます。
神饌物は神様とこれから家の守り主になる故人への大切なお供え物で葬儀の祭壇に飾るものですので、不足が無いように準備をしましょう。
葬儀社によっては神饌物を代わりに用意してくれるオプションもありますのでシングル者やおひとり様などで準備が大変な人は、相談すると良いでしょう。
また、神式の葬儀では神職が故人の生い立ちから生涯を紹介する儀式がありますので、故人の人となりや生い立ちをまとめておくと良いでしょう。
神式の葬儀マナーと地域性
神式の葬儀では仏教と使用する用語が変わり、全て祭りごとと表現します。
◇仏教 ◆神道
僧侶 → 神職
喪主 → 斎主(さいしゅ)
位牌 → 霊璽(れいじ)
戒名 → 霊名
お布施 → 御祭祀料、御玉串料など
お香典 → 御玉串料、御霊前
焼香 → 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
お通夜 → 通夜祭と遷霊祭(つやさい、せんれいさい)
葬儀・告別式 → 葬場祭(そうじょうさい)
火葬 → 火葬祭
忌中払い → 直会(なおらい)
また、火葬祭まで終わり自宅へ帰った時に行うのが『帰家祭(きかさい)』といい、帰家祭は無事に家に帰ったことを霊前に報告し、手を水や塩で清めます。
直会は忌中払いのような静かなお食事というよりは葬儀の関係者をねぎらう為の宴を意味します。
神道は仏教と違い、必ずこれといった信仰や習わしはありませんので地域によってはお供えなど特徴が違うこともあります。
分かりやすいところですと、御霊前のお返しの掛け紙に使用される水引は関東は白黒、関西は黄色と白になっています。
神道のお葬式に参列するときのマナー
仏教のお葬はなんとなく周囲の雰囲気に合わせれば乗り切ることができるかもしれませんが、神式ではそういうわけにはいきませんのでここで神式の葬儀のマナーとルールを学びましょう。
● 死を悲しみとしていませんので、お悔やみではなくご冥福を祈りましょう。不祝儀袋の表書きは『御霊前』、『御玉串料』です。蓮の柄は避けましょう。
※水引は白と黒のものか、双銀が一般的です。
● お焼香ではなく、玉串奉奠になります。おそらく資料が配布されます。
玉串奉奠の作法
- まずは遺族に会釈をします
- 神職の前に進み、一礼してから両手で玉串を受け取ります
※玉串の持ち方:右手は根元を上から包むように、左手は下から枝先に添えます - 持ち手を変えずにそのまま祭壇に進み、一礼をして玉串案(台)の上に置きます。
※玉串を置くときは祭壇に根元が向くように、回して置きます - 正面を向いたまま2歩下がり、二礼してから柏手(かしわて)を2回します
※葬儀では『忍び手』といい、手は打ち鳴らしません - 最後に一礼して、神職や遺族に会釈をして席に戻ります
キリスト教の葬儀で必要な準備とマナー
日本人はクリスマスなどのイベントごとに参加しても、教会へ通うなど実生活の中ではキリスト教を身近に感じることはあまりないと思います。
基本的にキリスト教でのお葬式は教会で行われることが多いので葬儀社などの会館での葬儀というのはあまりありません。
ですから、神父さん、牧師さんにお任せして準備を進めてください。
キリスト教の葬儀は、神様についてのお話があり、聖歌や賛美歌を歌い、最期に白いお花を献花してお別れをします。
とてもシンプルですが、教会でのお葬式は神秘的に感じるかもしれません。
キリスト教のカトリックとプロテスタントの違いとは
キリスト教にはカトリックとプロテスタントがあり、厳密に言うとそれぞれ葬儀の内容や流れが違います。
カトリック:葬儀と告別式は別々に行い、神父が葬儀を執り行う
- 入堂聖歌:聖歌の中で神父が入堂
- 開式の辞:神父が棺に聖水を注ぎ、献香の後に開式の辞を述べる
- 葬儀ミサ:聖書朗読、説教を行い、遺族が祭壇にパンと葡萄酒を捧げ祈る
- 入堂聖歌:聖歌の中で神父が入堂
- 聖歌斉唱:参列者全員で聖歌を歌い開式
- 弔電紹介:故人の略歴や弔電の紹介
- 献 花:喪主、遺族、親族、参列者の順に献花
- 遺族挨拶:喪主が感謝の挨拶をして閉式
プロテスタント:葬儀と告別式は分けずに、牧師が執り行う
- 入 場:オルガンの演奏の中で、牧師を筆頭に棺、喪主、遺族が入場
- 聖書朗読:聖書の朗読、祈祷の間に参列者は黙祷し、その後賛美歌斉唱
- 説 教:牧師が故人の略歴や人柄などを紹介し、説教が行われる
- 弔電紹介:思い出を語るような内容
- オルガン:オルガンの演奏の中で黙祷
- 祈りと献花:牧師が祈りを捧げ、全員で賛美歌斉唱し献花をする
- 遺族挨拶
同じキリスト教でもカトリックとプロテスタントでは用語やマナーも違う部分がありますので注意しましょう。
また、キリスト教では『死は悲しいが不幸ではない、永遠の命の始まり』という信仰ですので、お悔やみではなくお祈りをしましょう。
キリスト教の葬儀に参列する時のマナー
キリスト教でも、仏教でいう所のお香典がありますがキリスト教では『御花料』と表書きに記入してお金を用意します。
御花料の金額は仏教と変わりはありまあせんので、表書きだけ注意をしましょう。
また、服装も喪服で構いませんが神道と同じく数珠は不要です。
聖歌と賛美歌に関しては強制参加ではありませんが、必ず事前に祈りの内容が書かれた紙が配布されますので、できる範囲で参加をすると良いでしょう。
献花も慣れないとは思いますが、神道の玉串奉奠よりは覚えやすいと思いますし、最近では無宗教で献花をすることが増えてきているので知識の1つとして覚えておくと良いでしょう。
献花の作法
- お花があるもとへ行き神父または牧師、遺族に一礼して花を受け取ります。
※花は右手の手の平が上になるように持ち、茎は左手の甲を上で持ちましょう - 献花台に進み、祭壇に一礼します
- お花の根元を祭壇に向けるように回転させてお供えします
- 献花が終わったら祭壇に一礼し、最初と同じように挨拶をして席に戻ります。
献花の時に、キリスト教の方々は胸元で十字を切ると思いますが、参列者は強制ではありませんので、黙祷や一礼でお祈りをすると良いでしょう。
事前に理解をする大切さ、宗教の相違を認めよう
この様に日本にはたくさんの宗教宗派、宗教団体が存在しており諸外国に比べて信仰の自由度も高く、様々な宗教が入り乱れています。
仏教の中でもお花を飾ってはいけない宗派や、お香典というシステムがない宗派などがあり、神道やキリスト教を信仰している人もいれば新宗教を信仰している方もいます。
それぞれの宗教・宗派にマナーやルールがあったとしても、同じ宗教宗派を信仰していない限りは、詳しいことは何も分からないのですし、お互いに自身の宗教の信仰や葬儀の形を強制することはできません。
ですから喪主・遺族側も参列する親族も信仰する宗教宗派のルールやマナーに囚われすぎず、お互いに故人を偲ぶ形が違うこともあるという事を理解しなければなりません。
まずは葬儀の事前準備の前段階として、葬儀はどの宗教宗派で行うのかということを、はっきりと遺族と親族に伝えておきましょう。